対等契約
11
ユリアシティにはあっと言う間だった。
会話も無いんだ、当たり前か・・・。
みんながルーク無視で会話を進める中、あたしもだんまりだった。
あたしは、黙っていたその罪を、いずれ告白しなくちゃいけない。
みんなから、ルークからも責められる、その覚悟を・・・持てるだろうか・・・。
「ルーク、それにもよ・・・。」
ティアに名前を呼ばれても、あたしはぼんやりと顔を上げる、意識がぐらぐらした。
「お前も俺が悪いっていうのかよ!」
「悪いに決まってるだろうが、ふざけたことを言うな!」
既にルークとアッシュのいがみ合いだ。
「そうだよ・・・おまえは俺の劣化複写人間だ。ただのレプリカなんだよ!」
「ちょっと、そこまで・・・そんな風に言わなくても・・・。」
「・・・うるせぇ、お前は黙ってろ。」
「っ・・・。」
一騎打ち。
案の定、精神不安定もあるルークが負けた。
ガイがルークを部屋に運んだ。
あたしは、それを追うにも追えずぼんやりしていた・・・。
「。」
「・・・何?」
呼ばれなれない。
そう思いながら顔を上げると、アッシュに引っ張られた。
町外れ。
「ねぇ、何?」
「・・・お前・・・本当に覚えてないのか?」
「覚えてないって、一体どういうことなの?貴方、あたしのこと知ってるの?」
あたしはわけがわからなかった。
あたしがアッシュを知ってて、お前なんで俺のこと知ってるんだよ、なら考えついた。
でも、これは一体、どういうことなの・・・?
向こうから声がかかり、外殻大地に戻ることで話がある、と呼ばれた。
「ッチ。もういい。」
「ちょっと・・・!」
「うるせぇ、行くぞ。」
「・・・うん。」
何となく、聞いていいものじゃないような気がして、あたしは黙った。
わかったことは、間違いなく、アッシュはこっちの世界で、あたしを知っているということだ。
それに、あの感じだと多分、顔見知り以上ではあったと思う・・・一体どうなってるの?
考えればエンドレスなので、あたしは渋々アッシュの後を追った。
話は決まり、タルタロスの打ち上げが決まった。
きっと、アッシュとルークの回線も繋がったはずだ。
出発にはもう少し時間がある。
動けるところは少ないけど、あたしはこの町をうろついた。
「あ、イオン・・・体調はどう?それに、あの時・・・怪我とかしてない?」
「ありがとう。大丈夫ですよ、僕はの方が心配です・・・もちろんルークも・・・。」
「・・・うん・・・。なんだか落ち着かないな・・・この町。」
「・・・僕はこの町があまり好きではありません・・・。
この町の人々と僕では、スコアに対する考え方が違いすぎる。」
「そう、なんだ・・・。」
正直、このイオンのセリフにはちょっと驚く。
まぁ人間、だれだって苦手な人間が存在するのはあたりまえで。
イオンにだって苦手なものがあって当然だ。
タルタロスの打ち上げはすぐだった。
アッシュに即されて乗り込む。
打ち上げの際ぼんやり捕まって立ってたあたしは、凄い振動で倒れた。
叱られたり心配されたり。
「でもさーが一緒に来るなんて意外。」
「そう?」
「ええ、私もてっきり、ルークのところに残りたいというかと思いましたがね。」
「・・・ルークのことは、とりあえずティアにまかせるわ・・・。」
あそこに居たって何か出来るわけじゃない。
それに、あたしもあの町は妙に居心地が悪かった・・・。
何でだろう、あそこに居るとよくないというか、そんな感じが無意識に働いたのだ。
ヴァンがベルケンドによく足を運んでいたということで、そこへ向かうことに。
第一音機関研究所に行き、レプリカ研究施設へ・・・正直良い気分じゃなかったけど。
「やはりフォミクリーの禁忌に手を出したのか・・・生物に転用することは禁じられた筈。」
スピノザを捕まえ、大佐がまた怒っている。
「ふん・・・フォミクリーの生みの親のあんたならわかるはずだ・・・。
ジェイド・カーティス博士。否、ジェイド・ヴァルフォア博士!」
一同驚きを隠せず、だ。
結局スピノザに追い返される形になるが、フォニミンの話を小耳に挟み、ワイヨン鏡窟へ行くことに。
「。」
「・・・何ですか、大佐?」
「ここには医務室がありますから寄っていったらどうです?」
「そうだね、イオン様も心配してるし。」
「ええ、この機会に診てもらった方がいいですよ。」
「でも、アッシュもいるし急ぐでしょう?あたしは平気よ。」
「ですが、あまり無理はしてはいけませんわ、。いいでしょうアッシュ?」
「フン、そこら辺で倒れられても迷惑だからな。」
みんなは診察中待っててくれるということで、あたしはシュウ先生に診てもらうことになった。
「ふむ、大分疲労がたまっていますね・・・。
それから、体内のフォニムが非常に不安定です。何か心あたりは?」
「いえ、特に思い当たることはないんですが・・・。」
正直、ローレライとの接触ですか?なんて聞けるわけないし。
最近は例の声や、ローレライとの接触は皆無だ。
アッシュとルークが一緒に近くにいたせいだろうか?
先生は疲労回復的なお薬をくれた、診察はそれで終わり。
体内フォニムが不安定というのがどういう意味なのか、あたしにはわからなかったけど。
「どうでした?」
どうやらアッシュ達は先に行って準備を済ましているらしい。
大佐があたしを待っててくれた。
「わざわざ待っててくれたんですか?すみません。
ただの過労みたいですよ。体内のフォニムが不安定?とか言われましたけど。」
「・・・そうですか・・・。やはり・・・。」
「大佐?」
「いえ、無理は禁物ですよ、。」
「はーい。」
外に出るとみんなが待ち構えていた。
「お待たせしてごめんなさい。」
「いいんですのよ、。それで結果は?」
「過労だって、お薬も貰ったよ、ご迷惑おかけしまして。」
「じゃ次はワイヨン鏡窟だねー。」
「も大丈夫なようだし・・・悪いが俺はここで降りる。」
ジェイド以外、びっくりという感じだ。
ナタリアも追求してるし。
あたしは、イマイチ、ガイがアッシュに冷たい(?)のは良く分からない。
アッシュは納得してるみたいだけど・・・。
ガイはあたしたちと別れてアラミス湧水道へ。
「ガイ・・・気をつけてね、それに・・・ルークによろしく。」
「・・・ああ、お前もとんだ心配性だな・・・。」
「ま、ガイには負けるけど、ね・・・。」
あたしたちはガイと別れてワイヨン鏡窟に向かった。
アッシュなりの優しさ(?)でイオンは待機に。
「一人で残すのも心配だけど、気をつけてね。何かあったら叫んでね、イオン。」
「はい、も、みなさんも気をつけて。」
イオンを残し先に進むと、変てこなクラゲ。
「まぁ、何ですのこのクラゲは。」
「・・・ナタリア!」
アッシュがいれば大丈夫と思っても、知ってるだけあって体が早く反応する。
あたしがクラゲを踏み潰したのと、アッシュが切ったのはほぼ同時だった。
「あ・・・ありがとう、アッシュ、。」
「いいえ。」
ナタリアはアッシュと話がしたいだろうから、あたしは先に立って進む。
もうモンスターなんて、慣れっこ。慣れって・・・凄いな。
奥に着くと案の定、フォミクリーの研究施設に到着。
演算機がまだ生きているとのことで、アッシュとジェイドが興味津々だ。
「これは・・・かなり大きなものですね。」
「ホド・・・か。」
ナタリアもアニスもびっくりだ。
「ん?」
「何だ?」
「ああ、いえ。どうやらディストは個人的な実験もしていたようですね。
場所はここではないようですが・・・これは・・・。」
「・・・これは・・・!」
「何々、・・・ってこれ・・・。」
「まぁ・・・!」
アッシュをはじめみんなあたしの方を向く。
「え・・・何・・・?」
「、ちょっとこれを見て頂けますか?」
「うん、いいけど・・・・・・・・!!」
そこに映っていたのは、イオンやアニスと同じくらいの歳の女の子だった。
そう、あたしの。
あたしの小さいころの顔だ。
「・・・。」
あたしは口元を押さえる。
気持ち悪いって、否定するんじゃない、そう、ゾッっとするというか何というか。
「・・・この情報だけではまだ確信は持てませんが・・・。」
ジェイドが言いにくそうに口ごもる。
「・・・あたし、レプリカなのかな?」
オリジナル、なはずが無いのは明らかだ。
だって、オリジナルならアッシュのことがわかるはずじゃない。
・・・でも、なんで?
あたしはこの世界の人間じゃないのよ・・・?
「その可能性が高いでしょうね・・・。
「そうか・・・お前はレプリカだったのか・・・。」
「え?」
アッシュが小さく漏らした言葉を、あたしの耳は捕らえていた。
最も追求する間もなく、ナタリアがツッコむ。
「では、一体は何故別の世界から?」
「・・・ってさぁ、本当に別の世界から来たの?」
「・・・アニス!に失礼ですわよ!」
「だって、結構なじむの早かったしさー。帰りたいって言わないし。」
「アニス!」
「いいのよ、ナタリア。その通りだもの。」
傷つくとか、そんな感覚はなかった。
むしろ、あたしも、何で?という感じだ。
アッシュは黙っている。
「がレプリカなら、体内のフォニムが不安定というのも頷けますね。」
「そう、なんだ・・・。」
「それに、あなたのその疲労。少々尋常ではないと思っていました。」
ローレライが原因かと思ってたけど、そうじゃないのかな。
こっちの世界に来てからだし、体内フォニムがなんとかも、そのせいなんだろうか?
そもそも、あたし、本当に向こうの世界で生まれたのかな?
自分の記憶が疑わしいだなんて・・・本当、笑っちゃう。
・・・オリジナルと対面してないだけ、ダメージは少ないと思う・・・。
ルークは・・・ルークは大丈夫かしら。
ティアの叱咤激励で、うまく立ち直ってくれてるわよね・・・。
本当に・・・どうなってるんだろう・・・。
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2006/1/1
新年に重たいシーンを書いてしまいました。ヒロインはレプリカだったんですね。(人事だな)
捏造に捏造を繰り返しております。だから最近長くなる傾向に・・・。
ヒロインは、オリジナルと対面してない、のがやはり大きいので、驚いてはいますが、ダメージは低いかと。
最初の下向きから、やっと前向き?でまた下向き、という感じになってしまいそうですけどね。
そろそろアッシュに話をさせたいところです。