対等契約

















まぁ、あたしの悩みもここで考えたってしょうがない。
本人を問い詰めろってことだわ。
びっくりだったから、アッシュに会って感動とか、そういう感じじゃなかったな。
彼が死んじゃう。こっちに来て大分あたしの精神状態も落ち着いたみたい。
最初のうちはイオンを見るたびに下向き思考で大変だったけど。
そうだ、あたしには知っている。本来ないものが与えられている。
縋っていてはだめだ、せっかく知っている未来、無駄にしたくない。



はしっこで落ち込んでいるルーク。
どんな気持ちだか、なんてわかるわけない。
でも、声をかけずにいられなかった。



「ルーク大丈夫?」

「あ、ああ。あいつ俺と同じ顔して・・・。」

「びっくりしたかもだけど、その謎を解くためにもまずはオアシスに行きましょ、ね。」

「・・・お前は、さっきのこと、驚かなかったのかよ。」

さっきのことというのは、アッシュに名前を呼ばれたときのことだろう。

「心配してくれてありがとう。そりゃあビックリしたけど、それも本人に確かめなきゃわからない。
どっちにしたって今は先へ進むしか選択肢がないってことよ。」

「まさか・・・。」

「大佐?」

「ああ、いえ何でもありませんよ。砂漠を越えるとなると重労働ですからね。
砂漠で野宿というわけにもいきません、早いうちに出発してしまいましょう。」

「はーい。ほらルーク行こうってば。」

「わーったからひっぱるなっつの!」

「いやぁー青春ですねぇ。」

「そ、それはちょっと違うんじゃ・・・。」



オアシスまでの道のりは凄いものだった。
水の準備はしてあったものの、そりゃぬるま湯にもなるわけで。
バテバテの状態でオアシスにたどり着いたら、アッシュから頭痛のプレゼント(あたしにじゃないけど)

まぁとりあえずザオ遺跡へ来いとのことで、あたしたちはさっさと準備をして出発した。
ザオ遺跡はそう遠くなかった。

「なんだか暗そうだねー。」

「さっさとイオンを助けて戻ってくるのが一番よ。」

の言う通りですわ、いきますわよ!」

相変わらずのリーダーナタリア!ぶりでサクサク先へ進んでいく。
今考えるとセフィロトがあるからこんな深くまで降りたのだろうか。
否、そもそもは砂に埋もれた遺跡、なんだった。

先に進むとセカンドフォニムの結晶?とやらがあってミュウがミュウアタックを覚えた(?)

「なんだか可哀想ですわ。痛くはなくて?ミュウ?」

「体当たりだものね、むやみに乱用するような技じゃないわ。」

ルークが平気だろう、と無責任発言をしたため、ナタリアまで加わった説教の嵐。

「はいはい、緊張感が足りないっての。ほら、先行くよ。」

「ははは、今度はリーダーですね。」

「大佐は楽しそうでいいですね(遠い目)」

「ええ、楽しいですよ。」

「おいおい・・・。」

ガイのツッコミもむなしく、ジェイドはさらりとかわして先へ。
全員奥へ奥へと向かっていく。



「イオン!!」

一番乗りのあたしが大声で叫ぶ。
アッシュ、シンク、忘れてたけどそう、ラルゴも!

「まったく威勢だけは良い小娘だな。」

「本気でいくよ。」

まったく、話し合いでどーにかならんのか!ツッコミたいとこだけど。
お互い命を賭けている。生半可じゃないのは十分承知だ。

シンクの素早さには正直目が回る。
間合いに気をつけながら攻撃を入れるけど、近接戦対近接戦は厳しい。
かといって、あたしがラルゴに突っ込んだら体力的に無理。

「・・・!」

一瞬の甘さが命取りになる、とわかっていても気を抜きそうになる。
この子もイオンも同じレプリカなのだ。
でもこの子もイオンも別人なのに。
肩書きなんて、本当はいらないはずなのに。
なくても生きていけるものなのに、人はそれに振り回される・・・。
そんなの、どこの世界も同じね。

アリエッタと戦うことになった時点で決心は出来てるんだ。
ティアの援護、やアニスとの連携で削っていく。
あたしの放った一撃は隙を突いたシンクにモロに入ったわけで。
ラルゴ側もなんとか押さえたみたい。

「2人ががりで何やってんだ屑がっ!」

この口の悪さはいつからだったのかしら。
ルークとやりあうが、またシンクがアッシュを止める(この子の冷静さは見習うべきね・・・)

「取引だ。導師を引き渡してここでの戦いは切り上げたい。」

「お前達を倒してイオンを取り返すって手もあるんだぜ。」

ガイが挑戦的に言う。

「フン、ここが砂の下だってことを忘れないことだね。
こっちはこの遺跡ごとつぶしたって構わないんだ。」

「ここは提案を受け入れましょ。でも、あたし少しそこの彼に聞きたいことがあるの。」

アッシュを指差す。ルークには抜け駆けで悪い、けどね。
貴方は順を追って学ばなければ、理解しなければならないことがある。
なんて言い訳で、抜け駆けは抜け駆け、だ。

「「!?」」

みんなが突っ込みを入れてくる。

「お前、話を聞いてなかったのか?」

「あたしは微妙にこのお仲間とは部外者なんでね。貴方達とここで仲良く死んでもいいってわけよ。
でも、こんな女と心中したくないでしょ?大して時間はとらせないしと約束するし、答えを出せとは言わないわ。
どう、ほんの少しよ、かまわないでしょう?」

「だったら俺達も・・・!」

「そうは行きません、私達も先を急ぐ身ですし、イオン様の体のことも心配です。」

「旦那!」

、先にケセドニアに向かいます。・・・大丈夫ですね?」

「ええ。万一出港までに間に合わなかったら、死んだと判断して置いていってくれて結構。
生きていれば自力で行きます、必ず。」

「よろしい。それでは先に行きますよ。」

ありがとう・・・大佐。
正直ここから一人ってのは不安ではあるけど、まぁ今の状態なら死にはしないだろうし。
どのみち、覚悟は出来てるわけで。

・・・気をつけるのですよ。」

「ええ、ありがとうナタリア。我侭言ってすまないわね、みんな。」

あたしは小声でそう伝える、みんなの背中が完全に視界から消えて。
振り返った。



「で、あんたの話は何なわけ?」

「あたしが話すって言ったのはそちらのアッシュさん、なんですけどね。」

「フン、何を話されるかわかったもんじゃないからね。監視は必要ってわけさ。」

なるほど、全員腹の探りあいってわけか。
ラルゴは別段興味は無い、といった感じで黙っている。

「はぁ・・・いいわ。単刀直入に。あたしが聞きたいのは、貴方が何故あたしの名前を知っているか、よ。
あ、待って。でも答えは今ここで聞くのはなんとなくフェアじゃないと思うの、だから・・・。
今からあたしが聞く質問にイエスかノーで答えて頂戴。いいかしら?」

「・・・ああ。」

これは意外、何でてめぇにそんなこと答えなきゃなんねーんだ、とでも言われるかと思ってたから。

「じゃあまず、あたしの名前はヴァンから聞いたものかしら?」

「いいや。」

「・・・そう。じゃあモースから何か伝わっている、という点は?」

「ノーだ。」

やはりヴァンは関係ない、それに、アニス、ティアつながりじゃないってことだ。
そう・・・そこまでわかれば十分。
監視のあるところで話すべきじゃない。
そりゃあ物凄く気になるし(だってもともとこっちには存在しない人間なわけだし)
まぁ、あたしがこっちに来たことで、さらにスコアが狂ってきた、のかもしれないけど。

「・・・どうもありがとう。監視もご苦労様。それじゃ失礼するわ。」

もっと問い詰めるつもりだったから時間を気にしていたが、どうやらすぐに追いつけそうだ。
イオン様もいることだし一度オアシスには寄るだろうから、急げば平気ね。

「それだけか。」

背中にかかる声に、あたしは振り返らずに答える。

「貴方も何も聞かないじゃない。それに、いずれわかることだと思ってる。それじゃ。」



あたしは駆け出した。
魔物との戦闘は極力避けて出来る限り急いで遺跡を出る。

でも良かった。
これでアニスや、ティアにくだらない疑いを向けて接する必要もないもの。

猛スピードで追いかけて、オアシスでの休憩さえもそこそこに、あたしはケセドニアに向かった。

「あ!!!」

入り口で待ち構えてくれたんだろう、アニスが手を振っている。

「ただいま、間に合ったみたいで良かったわ。」

「私たちも今さっき着いたところよ。導師イオンとオアシスで休んでから出発したから。
それにしても随分早かったわね。」

「無事で何よりです、安心しました。」

ティアもイオンも、みんなを心配させたみたいで、あたしはつくづくダメだなぁ、と思う。
でも、こんなんじゃだめだ、我侭だって十分承知で、あたしはああすることを選んだ。
その事実は変わらないのだから。

「心配ありがとう、みんな。いつものように我侭言ってごめんね。
そんなことだろーと思って、オアシスは通っただけでここまで直行したの。」

「心配を掛けるくらいは構いませんけれど、貴女、体は大丈夫ですの?」

ナタリアがには呆れますわ、とため息。

「ん、船で休むから平気よ。」

「ルークの頭痛のこともありますから、いったん宿に行きましょう。」

「大佐!・・・って、ルークの頭痛?また痛むの?」

「イオンも休ませたいしな、とりあえず宿に行こうぜ。」



うっかり忘れてたわけで、宿に行く途中、ルークの呻き声で慌てて振り返る。
ティアが心配そうに近づくのを手を掴んで止める。
その瞬間、ルークがこっちに剣を向けた。
アッシュだ。

「う・・・体が勝手に・・・。」

その後倒れたルークを宿屋に運び込む。

「コーラル城でディストが何かしたようですね。
今度会ったら解かせますから、それまで我慢して下さい、ルーク。」

「わーったよ。」

ルークの頭痛も収まったし、あたしも仮眠を取ったしで、マルクト領事館へ。
不思議と、仮眠の時は声は聞こえてこなかった。
アッシュと接触したくらいだから、何かあると思っていたので意外だ。
もうじきアクゼリュスだと思うと気が重いというか、何というか・・・。
来るべき時が、来る。
あたしにはまだ、わからないことだらけだって言うのに。
どこの世界だって、時間は待っちゃくれないんだ。










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2005/12/30

きました捏造(えー。)本当は、廃工場出たとこでイオンと一緒にさらわれようかと思ったんですが(爆)
さすがに向こう側の状態が良く分からないので、こっちの形で進めました。
アッス(スって・・・)が何も聞いてこないのは、色々確信が持てないからです。もうちょいしたら暴露大会が始まりますよ(笑)