対等契約
8
あたしとイオンとミュウがおとなしく待っている間に敵襲は片付いたらしい。
うっかりしてたけど、そうだ、またもやディストに会い逃しちゃったってわけだ、
まぁ別に会いたかったかって聞かれると微妙なところだけど(酷い)
港に着くとゴールドバーグさんとセシルさんが居た。
「英雄」その言葉でヴァンに踊らされているルーク。
彼の師匠への信頼は絶対だ。
そう、最後まで絶対だ。
だから下手なことを言って止めることは出来そうにない。
あたしたちはルークにとって初めてに近い都バチカルを少々見学し、登城した。
イオンがルークの家を見たいということで言ってみれば。
ナタリア姫と遭遇。
一悶着?あったあと宿へ。
「どうしたの?複雑な顔ー。」
「いや、まさかお城に入ったり王様とかに会うことになるとは思って無くて。」
「でも凄かったよねぇ。お姫様も凄かったけど。」
アニスの発言に笑いながら、あたしは先に寝るね、とベッドに入った。
休めるところでは用心して早めに休む習慣をつけよう。
しかし、向こうの世界に居た時の方がよっぽど健康体だった。
本当に困ったものだなぁ。
眠っていると。今度もまた向こうから声がかかった。
「聞こ・・・る?」
かすれがすれなんとなく聞き取ることが出来る。
あたしは声をかけようとするけど、何故か声は出なかった。
ローレライじゃない。
これは一度だけ夢に出てきた声だ・・・。
「・・・このま・・・は・・・契・・・違え・・・しまう・・・。」
けい・・・たがえ・・・?契約のこと?
「・・・!」
最後は耳に突き刺さるようにはっきり聞き取ることができた。
「けれど、選択は貴女にまかせるわ。」
全然、全然わからない・・・。
起きたときは頭が混乱していたが、大分疲れは取れた気がした。
どうやら、昨日のあれはローレライとの接触とは違いそれ程の睡眠妨害ではないようだ。
あたしたちは再び登城することになり、そこでアクゼリュスに行くことが決まった。
「あたしはどうしたらいいかな・・・。」
ルークがヴァンに地下で会っているだろうな、と落ち込みながら。
ポツリと声を出した。
「イオン様やアニスとダアトに向かうのがいいと思うわ。」
「その方がいいでしょう、あまりを連れまわすべきではないと思いますよ。
貴女も体調のことがありますし、調べなければならないこともあるでしょう?いいですね?」
「・・・うん。」
そういうわけにはいかないことを知っていながら、あたしは渋々頷く。
ルークとヴァンが出てきて、あたしたちは陸路を行くことになった。
天空客車で下へ、するとアニスに会う。
イオンがさらわれたとのこと、しかも街の外ではシンクの妨害ときた。
ガイの提案で廃工場から外に出ることに決定。
ちょっと道場に寄り道した後、あたしたちはそこへ向かった。
「仕方が無いわね、。また連れまわすことになりそうだわ。」
「ああ?お前も来んの?」
「まさかをここに残すわけにもいかないだろう。」
「え、いや。残れというなら残るけど・・・。
(そしたら当分みんなに会えないしなぁ、こっそり追いかけちゃうよ)」
「は残して行ってもこっそり付いて来ちゃいそうだよねー。」
「・・・まぁあながち間違ってないけど・・・。」
「むしろ大当たりでしょう、。嘘はいけませんよ?」
「うぅ・・・。」
ともかく廃工場へ。ここでナタリアが仲間になるんだよね。
そして、ここを抜ければ・・・アッシュに「出会う」ことになるんだ・・・。
廃工場は本当に油くさかった。
ず、頭痛が・・・。
ガイが色々説明をしてくれまして。
「詳しいですわねガイ。」
「・・・って、ナタリア様!?」
ニッコニッコのナタリア姫(怖)
結局、ルークがナタリア姫と例の指切りをして話はまとまることに。
「お姫様は足手まといになると思いますー。」
「失礼ながら、同感です。」
「最初からそうと決め付けることないって、現にあたしみたいな足手まといもいるんだしさ。
それに、お姫様だからダメって、確かにお姫様は国にとって大事かもしれないけど。
ナタリア様は姫である前に一人の女の子でしょう?」
そう、姫ではない彼女は、本当なら一人の女の子であるはずだったのだ・・・。
肩書きに捕らえられることが良いのか悪いのか・・・。
「あら、なかなか私の肩を持ってくださるじゃありませんの。
そういえばお屋敷で見かけましたわね。貴女のお名前は?」
「です。ナタリア姫。」
「そう、よろしく。」
結局、敬語禁止敬称禁止令が下され、あたしたちは先に進むことになった。
珍しく大人なジェイドの発言に姫も納得。
彼女だって根はとても、とても素直なのだ・・・。
あの時・・・廃工場から出た時(もうすぐそれが現実になるけど)
ルークの隣に居るナタリアを見て、アッシュは何を想ったんだろうか・・・。
またしてもテンションだだ下がりのあたしをよそに。
アニスとティアがあたしの話をナタリアにしてくれていた。
正直、こういうところはとても助かる。
「まぁ、それでは、は別の世界から来たと言うんですの?驚きましたわ。」
「世間知らずその3ってことで、よろしくね。」
「お、うまいこと言うじゃないか。」
「ガーイ!」
「すまんすまん。」
流石のガイもナタリア姫にはタジタジだ。
みんなぐったりの中、なんとかあたしたちは出口へと近づいて来たようだ。
確か、この天空客車を動かした先にクモみたいなのがいて。
そして、非常口を抜ければ・・・。
「何か音がしたわ・・・。」
「何も聞こえませんわよ?」
「危ない!!」「ナタリア!!」
あたしとティアの声は被ったわけで。
ティアが庇ってあたしがナタリアを受け止める。
会話なんてしてる間もなく戦闘だ。
「とりあえずこの油をなんとかしなきゃね。」
「そうですね。」
詠唱妨害を避けるためにあたしも前に出た。
正直蹴るにしたって触りたくはないけど、我侭言ってる場合でもなければ余裕もない。
「ハッ!」
顔を狙って蹴りを入れる。
大佐の譜術のおかげでやっと油の剥げたクモ(もっとキモい)
全員で畳み掛けてなんとか倒した。
「正直気持ち悪かったわ。」
げんなりするあたし。
「流石のもお断りか。」
「まぁね。」
ガイが茶化すのに、あたしも素直に頷く。
「あの、、ティア・・・ありがとう。迷惑をかけてしまいましたわね。」
「いいのよ。」
「そうそう、仲間なんだしお互い様だよ。次、気をつければいいことじゃない。」
「よくねーっつーの、足ひっぱんなよな。」
「ルーク!誰だって初めはわからないこともあるでしょう?
あんまり自分を棚上げして怒っちゃダメだよ?あたしが言えた義理じゃないけど。」
「・・・へいへい。」
ルークがこんな風になってしまた原因はヴァンとガイだけにあるとは言えない。
でも、本人だけが悪いわけじゃない。
人にはどうすることもできない「環境」だって存在するんだから。
すぐそこの非常口から外に出られるとわかって、あたしたちははしごを下ろし後に続いた。
ルークの後スッパツ着用のあたし。ティア、アニス、ナタリアの順で、あとはガイと大佐。
はしごの途中でトンっと飛び降り、前を見れば。陸艦。それにアッシュ、イオン、シンク・・・。
「・・・!てめぇ、イオンを返せ・・・!!・・・!?」
同じ顔、まともに顔あわせるのこれが初めてだもんね。
シンクがアッシュに耳打ちしてる。
あたしはジっとシンクの方を向いた。
それから、アッシュに顔を背ける。
「いいご身分だなちゃらちゃら女を引き連れやがって!!」
「んだと!?」
そう、ふいに。
あたしとアッシュは目が合った。
「・・・・・・?」
「え・・・?何であたしの名前・・・?」
一瞬ピリっと頭痛が走ったような気がする。
「ほら、行くよアッシュ。」
「あ、ああ。」
シンクに促され、アッシュ達はイオンを連れて行ってしまった。
って、行かせてどうするのあたし。
「イオン、あの隙にあたしが突っ込めば・・・。」
「・・・!しょうがないよ、みんな固まってたわけだしさ。」
「でも、貴女アッシュと知り合い・・・なわけないわよね。」
ティアが自分で言って、自分で口を噤む。
「うん、まともに顔合わせたのこれが初めてだし・・・自己紹介なんてもちろんしてないよ。」
「が実は六神将と繋がってる、っていう線はまず無いしなぁ。」
「ガイ?」
「他の六神将がお前に全然構わないのもおかしいだろう?まぁ作戦のうち、ならあるかもしれんが。」
「そうね、まぁそうかもしれないけど。」
「おやおや・・・普通そこは怒るところですよ。」
「あってもおかしくない可能性として納得しているだけよ。」
こんなところでわいわい話していてもどうにもならない。
とにかくオアシスへ向けて、あたしたちは出発することになる。
アッシュは何であたしの名前知ってたんだろう・・・?
アニスがモースと通じてるってことは関係あるのかな?
でもモースは怒ってるらしいし、ティア・・・があたしのこと報告した?
うーん、あの素振りに嘘があるようには思えないし。
あんな風に驚かれると、こっちが困っちゃうのよね・・・。
BACK NEXT
2005/12/30
意味深な出会いにしてみました(笑)ヒロインの視点は大人な視点というわけではないです。
ちょっと大人ぶらせてますが、中身はまだまだ子どもです。
ただ、知っているだけ、その場その場で十分考えた上の発言を出来る余裕があるという、そんな感じで(謎)
ちょ、ちょっと偉そうで嫌なヒロインでしょうか(ドキドキ)私は結構強気なおなごが好きなので(何それ)