対等契約
















本当だったら当然一番攻撃したく無い相手、アリエッタ。
獣×2はルーク達にまかせて、あたしは彼女に飛び掛る。
無駄に剣で攻撃させればダメージが高いのは請負だ。

「悪いけど、ちょっとおとなしくしててもらうわよ!」

彼女が凄いスピードで詠唱して放ってくる譜術をギリギリでかわしながら。
あたしは彼女の背後に回って、首の筋に軽く一撃を入れる。
これが一番の安全策だ。
倒れた彼女を抱きかかえ、被害の出ない場所にそっと下ろす。
後はあたしが加わるまでもなく簡単に片付いた。

、ありがとうございます。」

「え?ああ、アリエッタのこと?だったら気にしなくていいのよ。
こうしとけば一番安全だし、まぁ卑怯といえば卑怯なんだけど。
実戦ではそんなの言い訳だしね。」

あたしがイオンと話しているとヴァンがやってきた。
馬車が来ているそうで、イオンの体のこともあってそっちに同行させてもらうことに。
カイツールへはあっと言う間だった、もともと大した距離じゃなかったし。
出港は明日ということなので、港の簡易宿泊施設にお世話になることに。



「これでやっと帰れるぜ。」

「そうね・・・それに今までうやむやにしてきたけど。のことも考えないと。」

「え、あたし!?」

ティアが急に話題を振るもんだから、あたしは変に裏返った声を出した。

「ええ、の帰る方法も考えなくてはいけないわ。
そもそも、どうやって来てしまったのか、がわからないとダメかもしれないけど・・・。」

は強がって「帰りたい」って言わないから。
そう続けたティアに、あたしは心の底で、その強がり、そっくりそのまま返すわよ、と思った。
大佐やガイあたりは、あたしが帰りたいって言わないこと、不審に思ってるかもなぁ。
それに、ここのところ契約違反のこととかばっか考えてて、自分の話もろくにしてなかったし・・・。

「おーい、聞いてるー?」

アニスがあたしの顔の前で手をブンブン振っていた。

「わぁ。な、なんだって!?」

「とりあえず、ダアトに行けばに関する預言とか分かるかもしれないってことで。
平和条約が締結したらダアトでゆっくり考えよー、ってこと!」

はそれでいいですか?」

イオンがいつものように心配そうにたずねる。

「うん、あたしはみんなの忙しいのが終わったらで別にいいもの。」

「・・・まぁ何にせよバチカルに行きゃーいーんだろ。俺はもう寝るぞ!」

「ルーク!」

ティアはルークを説教しながら追いかけていく。

「じゃ、イオン様、私達もそろそろ寝ましょー。」

「あ、はい。おやすみなさい。」

「おやすみー。」

さぁて。気まずい感じで残っちゃったわけよ。
ガイ、ジェイド、あたし・・・。



「・・・。」

「なぁ、。」

「んー、何?」

「お前少しも俺達に自分のこと話さないよな。」

「・・・。」

きた。そりゃあんた達だって秘密がいっぱいでしょ、とは流石に言えない。
特に、別の世界から来て普通オロオロするはずの人間がコレだ。

「いや、別に話したくないことを無理に聞き出そうってわけじゃないんだ。
ただ、ちょっと心配になって、な。」

「その優しさはとてもうれしいのだけれど、今は・・・あまり話せることが無いの。」

「まぁ、いずれ話してくださるなら私はそれで結構ですが、ね。」

「・・・うん・・・。」

まぁ正直、平和条約は当分締結されないわけで。
ダアトには当分行かないわけで。
旅は続くわけで。
だから、当分、話せるわけもないんだ。

「一つだけいいか?お前の家族は・・・心配してるんじゃないのか?」

ガイらしい質問だと思った。

「あたし家族はいないから平気よ。」

「・・・!そうか、そうじゃないかとは思ってたんだが悪いな。」

「別に。もともと孤児院で育ったし、家族ってイマイチわからないんだよね。」

「そうか・・・。」

「まぁ、貴女が帰りたがらない理由の一つとして、そうではないかと思っていましたが。」

「察しがいいわねぇ、大佐は。・・・っと、あたしここのところ体調不安定で(本当は睡眠妨害で、だけど)
迷惑のかけっぱなしだからそろそろ寝るわ。」

「ああ、おやすみ。」

「おやすみなさい、。」



2人に背を向けて隣の部屋へ向かう。
本当ならここで全部を話して、アクゼリュスの崩壊も止めれちゃったらどんなにいいんだろう?
そしたらみんな助かるんじゃないの?
ううん、いくらなんでも、多分今は信じてもらえないと思う。
話すべき時は今ではないだろうし・・・。



ベッドに入ると、すぐに寝付いた。


よ・・・!聞こえるか?」

耳鳴りのように響くその声はいつもより聞き取りやすい。
ルークの同調フォンスロット?が開いたことも関係あるのだろうか。

「聞こえるよ、それにあんたの方から話しかけてくるって珍しいなぁ。」

「うむ、事は急を要すのだ。一つだけ、お前に警告をしておこう。」

「???」

「契約の時まで出来る限り力を使わぬことだ。」

「だ、だから契約がわかんないって言ってるじゃん!それに力って何の力よ!」

「こうして我と会話しているのもお前の力故だ、忘れたのか・・・?」


その後は聞き取れなかった。
じゃあローレライと話をするなってこと?
ん、そこまでじゃないのか。
まったくよくわからないなぁ。
それに今日はなんでこんな簡単に接触が途切れたんだろう・・・。



身支度を整えてあたし達は船に乗ってケセドニアへ。

「お前早く寝るって言ったわりにさえない顔だな。」

「んー。何か眠りが浅くてね。」

ガイのツッコミに寝不足の目をこすりながらそう答える。
船室でじっとしてても仕方が無い。

あたしは甲板に出ようと部屋を出る、と赤毛の後姿。
・・・そうだ、ヴァンに呼ばれてルークは・・・。

知っている会話を盗み聞きしたってしょうがない。
英雄なんて言葉に踊らされて・・・本当に・・・。


残酷だよ。


アニスやイオンと他愛ない話をしている間に、あたしたちはケセドニアに到着。
アリエッタをどっかに届けるうんぬんであたしたちはヴァンと別れた。

「ここがケセドニアかー。賑やかだねー。」

「ね、!せっかくだし何か見てまわろーよ!」

「うん、そうしましょ。」

散々観光気分を堪能した後、漆黒の翼に絡まれる。

「だー絡むなっての!アニスも落ち着いて!」

「おやおや、騒がしいお嬢ちゃんまでいるのかい。ん・・・?」

「何よ、あたしの顔に何かついてる?」

「・・・いーや。それじゃあね。」

「待ちなさい。」

ズラかろうとしていた漆黒の翼をバッチリティアが押さえつけ、この件は解決。
キムラスカ側の領事館を尋ねると船の出港準備にはもうしばらくかかる模様。
結局アスターの屋敷で、シンクの持ってたフォンディスク?だっけ?
あれを調べてもらうということになり屋敷へ。
猛烈にデカイ家に。アニスがきゃわーんとか言ってる間に解析は終了。



アスターの家を出て港に向かうところだった。
殺気を感じ取った瞬間には、シンクが襲ってきたいたわけで。
頭の契約違反、なんて言葉はどっかに消えていた。
うっかりシンクを止めようと前に出たけど、ダメだったわけで。
あたしがカースロットにかけられったってわけじゃなかったみたいだけど、
とにかく、弾き飛ばされた衝撃と急な頭痛であたしは意識を失ってしまった。
耳元でシンクの舌打ちが聞こえた気がする。

!」

「こんなところで戦うわけにはいきませんからね。急いで船へ!」

ティアをはじめ、みんなの声が耳に残る。
その後、あたしの体が浮いたようだったけど、よくわからなかった。





「っ・・・あれ?ここは・・・?」

「案外すぐ目が覚めてくれて助かりましたよ。」

「た、大佐?あたし・・・あれ?あの時飛び出して・・・?」

「そのまま意識を失ってしまったようですから、私が運びました。」

「はこ・・・ええええええ!?ちょ、大佐、そういうの無しじゃ!?」

コーラル城では冗談とはいえあれほど否定していたのに。

「状況が状況でしたからね。」

「ご、めんなさい・・・体が自然と動いてその・・・。」

「・・・あまり心配をかけないで下さいね。」

ポンポンと頭を撫でられる。
あたしが大丈夫だとわかって、同じ船室にみんなが集まってきた。
さっきのフォンディスク?の内容の話。
そう、フォミクリーの話だ。

には難しい話かもしれないわね。」

ティアが顔をしかめる。

「うーん。こっちの原理のこととかはよくわからないけど、・・・。
あたしの居た世界にも似たような技術はあったよ?細かいことまではわからないけど・・・。」

あっちで言えばクローンってところだろう。
同位体がなんやら、フォニム振動数がなんやらの話をしていると、突然兵士が入ってきた。
なかなか反応の良いルークと、ガイで廊下へ押し出しす。

はイオン様とここに居て下さい。」

「でも・・!」

「また倒れられても、戦闘中に海の下じゃ流石に困るんでね、我慢してくれ。」

「そーだよ、お前もイオンも青白い顔しやがって、待ってろっつーの。」

「うん、ありがとう・・・ごめんね。」

「じゃ、さっさと原因つきとめちゃいましょー!」

アニスが駆け出してみんなは甲板に行ったようだ。

「ミュウもいるですの!さん大丈夫ですの?」

「倒れた時は流石に驚きました、本当に大丈夫ですか、?」

「うん、多分、ただの寝不足だと思うから・・・。」

「何か原因はわれば・・・対処のしようもあるんですが・・・。」

「夢見が良くない、って言えばいいのかな。
(まさかローレライとしゃべってます、なんて言えるわけないし)」

「夢見・・・ですか、まぁともかく、どこかで医者に見てもらった方がいいかもしれませんね。
精神的な問題も関係しているのかもしれません。」

イオンがあたしの手をギュっと握った。

「・・・?」

「貴女は一人じゃないんですから、辛い思いを抱え込まないで下さいね。」



あたしはその手をギュっと握り返して。ただ、ありがとう、としか言えなかった。
それは貴方も同じでしょう、ってイオンに言いたいよ。










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2005/12/29

ヒロインは言いたいことまで溜め込むので大分下向き加減ですね。
ローレライとの接触は睡眠不足で目にくまが出来る、というのではなく。
体は寝てはいるけれどエネルギーを消耗している、という感じです、まぁ過労みたいな感じで(捏造)
うちのイオン様は今後も美味しいとこどりです(´▽`)