対等契約
6
カイツール、ヴァンのことに気を取られていたけれど、そうだ。
アニスと会うため、だったんだよね、名目は。
アニスの本性が見えたような見えないような。
イオン様の天然発言でガイもタジタジ。
「でも、アニスが無事で良かった。」
「も心配してくれてありがと☆」
この子の苦労も悲しみも痛みも。
知るのは、ずっと先だと思えば頭が痛くなる。
「しかし、旅券がないとなると・・・困ったわね。」
ティアの呻きにあたしも賛同する。
どうにかしてくれっつーの。
「ここで死ぬ奴にそんなものはいらねぇよ!」
!!
ルークに切りかかった男。
「ひけ、アッシュ。」
それを弾くヴァン。
「ヴァン・・・どけ!」
何で。
何で忘れてたんだろう。
アニスやヴァンに会うってことで頭が一杯だったから?
一瞬の出来事だから忘れていた?
・・・やっぱりちょっと疲れてるのかな・・・。
ティア達がヴァンと話している間。
あたしは軽い頭痛のする頭を押さえていた。
・・・アッシュ・・・貴方、今も単独で行動しているの?
最初から、全部知っていたの?
ううん、そんなことが知りたいんじゃない。
「おい、?宿屋に行くってよ。」
ガイが声をかけてくれてハッっと我に返る。
「あ、うん。行く行く。」
小走りで宿屋に駆け込んだ。
話は第7譜石やらモース派が何やらで。
あたしにはまだまだ難しい話だった。
「お前達に旅券を渡しておこう。予備を足して・・・む、一枚足りないな。」
その発言にあたしは、げっ!と思わず叫ぶところだった。
ヴァンの方は先に行くそうで、さっさと行ってしまった。
(あたしの分の旅券をなんとかしてくれようとかいう気持ちはないのか・・・)
「あたしだったら、どっかこの辺でうろついてるから平気よ。」
「そ、そうはいかないわ、!貴女をそこらへんに放っていくなんて!」
「何々?わけありなの?」
アニスがニヤニヤを聞いてくるので、あたしは仕方なしに説明した。
「うっそー!全然知らなかった!案外わからないもんだねー!」
「まぁ信じる信じないは個人にまかせるとして・・・うーん、困ったなぁ。
旅券なんてどっかに落ちてるようなもんじゃないだろうし。」
「俺の使用人だって言えばいいんじゃねぇ?半分はメイド服だし。」
「流石に今の状態ではそれでは通らないでしょうね。」
大佐も悩んでいる。
あたしはというと、服をはたいたり、荷物(制服とかしか入ってないけど)をちらかしたり、
ポケットをごそごそしたりしていた。
「んぅ?」
「どうした?」
「なんじゃこりゃ。」
ポケットから少々皺の出来た紙。
「、それ旅券じゃない?」
ティアがあたしの手を覗き込んで見る。
「どうやらそうみたいですね。」
ジェイドも頷く。
「で、でも何でこんなの入ってるんだろう。」
着替えてから今まで気づかなかったのかな・・・。
もしかして・・・。
「もしかして、陛下のかしら?」
「え?」
「だってその服、陛下のものだったんですよね?」
「ええ、そうですが。・・・まぁ何はともあれの分が揃ったんです。行きましょうか。」
意味深な間はおいといて、ルークも急ぐぞ!と煩いのであたしたちはカイツール港へ向かうことにした。
海岸沿いにすぐだったので、あっと言う間に到着したあたしたちは、見たくも無いものを見ることになったわけで。
焦げ臭いところをみれば、間違いなく船はやられたみたい。
空には魔物だし、あたしたちが奥へ進むとヴァンがライガを片付けたらしい、兵士の死体も転がってる。
アリエッタはアニスと言い争った後、ルークとイオンにコーラル城へ来るように言って去ってしまった。
アッシュの命令だという・・・。
「お前達は戻りなさい、アリエッタは私がなんとかしよう。」
そう言われてはいそうですか、ってわけにはかない。
ルークのこともあるし。
それに、あたしの理解が正しければ、あそこでルークに何かして・・・。
2人の意思疎通が可能になったんじゃなかったかな。
とりあえず入り口に向かうと、ここの兵士らしい人が話しかけてきた。
連れて行かれた隊長さんを助けてくれってことで。
まぁ当然のなりゆきで、あたしたちはコーラル城へ行くことになった。
「しかし、金持ちってのは別荘が城!信じられないなぁ。」
目の前のソレを見てハァ、とため息。
「ルーク様の別荘!未来のアニスちゃんの別荘!」
るんるんなアニスにあたしはトホホ、と思いながらみんなの後を追う。
「おい、ルーク。あんまり離れるなよ!」
「げ、ルーク後ろ!」
へんな石造みたいなのに背後から襲われるという形になり。
陣形の取れないあたしたちはごちゃごちゃに。
ティアに説教されてるルークは放っておいて。
さっさと仕掛けを解除して、あたしたちは奥に進むことに。
そして例の。そう、例の装置のある部屋に来た。
あたしはフォミクリーがどんな風に行われるのか知らない。
でも、なんだか凄く頭が痛い。
きっと、ルークだけじゃない、イオンやシンクのこともあるからかも。
いまだに、慣れない自分に苦笑するしかない。
「、顔色が悪いよ、へーき?」
「うん、平気よアニス。」
あたしとアニスとイオンでくっついて行動していたため、真っ先にアニスが気づいた。
「はカイツールで休んでいた方が良かったかもしれませんね。」
心配そうなイオン。
「大丈夫大丈夫、ここまで来たんだし、サクサク進んで帰ればいいことよ。」
装置のところまでくると、ジェイドが押し黙った。
アニスがガイに抱きついて尋常じゃない反応。
重たい空気。
「ともかく、確信が持てたら私から話します。」
その一声でお開き。
あたしは後ろ髪ひかれる思いで振り返りながら、小走りで後を追った。
「誰にでも、話したくない過去くらいあるものね。」
「・・・そうだね。」
あたしにも、今話せないことがある分、ティアの言葉には重みがある。
「さぁ、先を急ぎましょ。」
サクサク進んだあたしたちはライガのしっぽを追いかけちゃったアホなルークと。
アニスとイオンを追っかけて屋上へ。
そうだ、これでルークがさらわれて・・・!
って思ったときには既に遅し、でアニスは振り落とされてルークが連れていかれる。
「しまった!」
間に合わないとはわかっていても知っている身だし追いかけなきゃ!
あたしが飛び出すのとガイが走り出すのは一緒だった。
流石にあたしはガイに一歩遅れをとってそこに着く。
「あっ・・・!!」
「チッ。」
シンクの仮面が吹っ飛んだ瞬間で、バッチリ、それはもうバッチリ目が合ってしまった。
流石にディストには会えなかったけど(まあもうちょっとしたら会えるだろうし)
シンクは捨て台詞を吐いて素早く立ち去った。
そうだ、確かここでルークは同調フォンスロット?を開かれて・・・。
「ルーク!だいじょうぶ!?」
「あー・・・。ったく、あいつら俺に一体何を・・・。」
「まぁ何にせよまた屋上だそうだ。」
「た、体力勝負だなぁ。」
あたしはハァ、とため息。
「大丈夫ですよ、が疲れたがガイが負ぶってくれるそうですから。」
ニコニコ。
「・・・。(はぁ)」
「わ、悪いが・・・。」
「大丈夫よ。いざとなったら大佐に負ぶってもらうから。」
「おや、私も若くないので困りますね、そうなるとルークに・・・。」
「ああ、俺!?」
「ええい!たらいまわしかあたしは!」
「、僕で良かったら。」
と、心配そうにあたしを見下ろすイオンに。(案外大きいんだよね)
「良くない良くない。あたしは大丈夫だからとっとと行きましょ、ほら!」
結局駆けつけてきたみんなを促して、あたしたちは再び屋上へと向かった。
ルークのことはとりあえずいいとして。
アリエッタは何とかしなくちゃ。
相手は獣×2+アリエッタ・・・正直しんどいけどやるっきゃない。
階段から顔を出し、再び襲ってくる敵にミュウが火を吐いた。
アリエッタの悲鳴が、戦闘開始の合図・・・!
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2005/12/29
ヒロインはもうちょっと(まだ大分あるかもですが)自分がみんなのすることを知ってると告白します。
知ってて黙ってるから余計重たいですなぁ。
あ、シンクの顔をバッチリ見せたのはただその方が美味しいかと(強制終了)