対等契約
















「・・・!ローレライ!聞こえる?」

夢の中で目を覚まして(変な話だけど)あたしは叫んだ。

「ああ。」

「ねぇ、あたし契約って知らないのよ。あたしは何をすればいいの?
何をしちゃいけないの?・・・教えてよ・・・。」

「・・・?我の呼びかけにお前が答えたのではないか・・・。」

「ちょ、ちょっと待って、こないだもそんなこと言ってたけどあたし知らないのよ!」

「・・・一体どういうことだ・・・我は確かにお前と・・・。」

「・・・?あ、そうだ。それからついさっきあたしに話しかけた?」

「否。お前と同調できる夜中以外はぼぼ接触不可能だが・・・。まさか・・・。」

「まさか?」

「・・・ともかく、契約以外の運命は変えぬことだ。また連絡する。」

「え、そんな、あたしまだ貴方に聞きたいことが。」

「覚えておけ、お前と我の接触は本来ありえないのだ。」

それには、あたしも黙って頷いた。
だって、これが出来るのはルークかアッシュのはずじゃない。

「ともかく、こうして接触する時間が長ければ、お前の体にも悪影響を及ぼす。」



それだけ勝手放題で、ローレライは消えてしまった。
「契約以外の運命は変えぬことだ。」
じゃああたしは何かの運命を変えるために契約をかわしたっていうの?
どうしてそんな大切なこと覚えていないんだろう・・・。
記憶喪失・・・って事は無いだろうし・・・。
あたしは一体・・・。



「ん、顔色が良くないぞ、大丈夫か?」

ガバって起きたあたしに、ガイが声をかける。

「ええ・・・心配かけてごめんなさい、大丈夫。」

こうやって何回心配かけるんだろう。
皮肉だ。あたしが彼らの重荷になっていくなんて・・・。

「じゃ、行きましょうか。」

立ち上がった時に体が重い。
これが悪影響?
なんでそんなものが起きるんだろう・・・。
それに、契約違反・・・あたしは何を契約したんだろう・・・。



大佐が陣形を指示している。

「待ってくれよ、俺も戦う。」

「・・・人を殺すということは、相手の可能性を奪うことよ。」

「恨みを買うことだってある。」



は随分落ち着いてるじゃないですか。」

「そんなことないですよ・・・。怖いですよ。でも、それしか無いって知ってるから・・・。」

「そうですね。」

あたしはパっと顔を上げた。
大佐の赤い瞳とばっちり目が合うと何でも知られてしまいそうで・・・怖い・・・。



もうセントビナーは目と鼻の先だ。
門の前のオラクル兵の様子を探る。
偶然エンゲーブから来ていたローズさんの馬車に乗せてもらって、
あたしたちは無事セントビナーに入ることが出来た。
ひとまず無事中に入ることに成功。
マクガヴァン将軍からアニスの手紙を受け取る。

「モテモテだなルーク。ナタリア姫が怒るぜー。」

「愛されてるわねぇ。」

半分呆れながら、あたしもツッコミを入れる。

「だー!うっせぇな!」

「照れちゃって照れちゃってー。」

結局あたしたちはカイツールに行くことになる。
町の少年がジェイドに、お願いをしていた。

「ネクロマンサーに会ったら、キムラスカに殺された父親を生き返して欲しい」

って。
ガイも冗談交じりに出来るもんならやってもらいたい、って。
ティアだって、ご両親のこと・・・よくわからないけどそうかもしれない。



はそういうの無いのか?」

「あたし?そうね、今は、無いかな。それに、あったとしても・・・。」

「ん?」

「ううん、なんでもない。」



まだ。大丈夫。
それにあたしが望むのはそれじゃない。
フォミクリーじゃないんだよ。
レプリカを否定するつもりはない。
むしろ、使い方(こう言っていいものではないけど)によっては素晴らしい技術だよ。
でも、あたしが望んでいるのはそれじゃない。



町を出ようとしたら六神将が待ち構えていて、あわてて身を隠す。
やり過ごして町を出ようとするが、イオンがお疲れであたしたちは宿へ。

「イオン、ゆっくり休んでね。温かいもの食べて、いっぱい寝て。元気出たら一緒に行こうね。」

「はい。ありがとう、。」

ニコっと笑うイオン。
あたしは、万一それが契約違反になっても多分・・・。



「何処行ってたんだ?」

「ガイ!?ああ、ちょっと体動かしたくて。」

そうでなければ、考えがぐちゃぐちゃになってしまいそうで。
怖くて。
外で秘密の特訓、なんて聞こえはいいけど、ね。

「そうか、お前も顔に疲れた、って出てるぞ。早めに寝ろよ?」

「・・・!・・・うん、ありがとう、おやすみなさい。」



あたしはそのままドサっとベッドに倒れこんだ。
疲れていたせいなのか、あるいはローレライが意図的に接触を拒んだのか。
その日は声は聞こえてこなかった。



「しっかしなんだかんだ言って優しいじゃないのルークも。」

「ご主人様は優しいですの!」

ミュウを抱っこしたままルークをからかう。

「るせぇ!イオンも元気になったんだし、さっさと行くぞ!」

「とりあえず、フーブラス川を渡ってカイツールに向かいましょう。」

「今なら水かさもそう高くは無いでしょうからね。」

ティアと大佐の提案にみんなで頷く。

「じゃ、出発といきますかー!」

食材も買い込んだし。
装備も適当に整えたしあたしたちはフーブラス川へ向かう。
のん気なあたしは半分ピクニック気分で(なんせ睡眠妨害がなかったので)
イオンと手をつないで一緒に歩いた。(きゅん死)



川は浅瀬だったけれど足場が悪いし。
ガイも気をつけろと念を押していた。
あたしはイオンのちょっと先を進んで時々手を引いたりして進んでいた。

「わ!」

足を滑らせて、げっ・・・ずぶぬれ・・・と思った瞬間。
パシっと手つかまれた。

「ほら、だから気をつけろって言ったろ。」

「・・・ありがとう、ガイ・・・でも。」

「あ。」

ガイが慌てて手を離して水に落ちそうになった。
まぁ華麗なガイ様はそんなヘマはしなかったのだけど、一同笑ってしまった。

「ごめんね、ガイ。ありがと。」

「いいや、が濡れなきゃそれで良しだ。」

「あはは。」

さっさと浅瀬を抜けて対岸へ出る・・・と。
ライガのお出ましだ。

イオン様が説得するも流石に効果なし。
アリエッタのママを殺したのは、何の間違いもなくあたしたちなんだからね。
ホド。これにガイはそれ程反応はしなかった(意外だけど)
話がまとまらない間に地震が起こり、障気が噴出した。
ティアがユリアの譜歌でフォースフィールドを展開。
詮索する間もなくあたしたちは急いで川を後にした。



大佐が興味津々でイオンとティアにユリアの譜歌について聞いていた。
あたしはぼんやり今後の展開を思い出そうとしていたのだが、声をかけられて中断。
さっさとカイツールに向かうことになった。



とうとう、ヴァンとお目見えってわけだ。
そう思うと流石にどうしていいかわからない。
今あたしは、彼のしようとしていることを知っているのだから。
でも、進まないわけには、いかないから・・・。










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2005/12/28

ぜ、全然ギャグになりませんよ・・・こりゃシリアス連載に名前を変えたほうが・・・。
やっぱギャグだったらもっとギャグ全開で行くべきなんですけど。
このヒロインに慣れてしまったのでなんとも・・・。