対等契約
















外へ出ると、どうやら始まってしまったようだ・・・グリフィンの襲撃・・・。
六神将・・・。
心のどこかで凄く、痛いものを感じた。
グリフィンからライガまで強襲してきたのことでルークが騒いで外へ出ようとする。

「ルーク!外は危険よ!」

ティアが止めに入るも。
呼んじゃいないがラルゴの登場。
大佐の譜術が飛ぶ。

「導師イオンに使うはずがこんなところで使う羽目になるとはな。」

体が動かない。
もちろん、あたしが飛び出したってどうなることでもないってわかっていても。
歯がゆくて唇を噛んだ。

「大佐!」

「大丈夫ですよ、。」

「ともかく、ブリッジへ・・・。」

「う、うん。ルーク、大丈夫?行きましょ。」

「あ、ああ・・・。」

あたしだって、人が人を刺すとこなんて生で見たのこれが初めてだ。
貴方と同じだよ。でも貴方とあたしは違う。
あたしは、知ってる・・・から。



そこらの獣を蹴散らしながらブリッジへ。
ルークを見張りに残す。

、あなたも中へ。」

「で、でも。」

大佐に腕を引っ張られる。
ルークを振り返る。
そうだ。ここであたしがルークと一緒にいて。
それであたしがオラクル兵士を殺してもきっとそれは大した違いにならない。
だってこれから嫌でも片付けなきゃいけないんだもの。

「うわぁ・・・!」

その声を聞いた瞬間。
あたしは真っ先に外に出る。

「人を殺すことが怖いなら剣なんて棄てちまいな。この出来損ないが!」

そう。
この人は生きてるんだ。イオン様が生きてるように。
ごちゃごちゃの感情のまま。
あたしは顔を上げることが出来ずに俯いていた。
中から大佐もティアも駆け出してきた。

しまった。

と思ったときにはもう遅くて。
鈍い痛みを感じてそのまま倒れた。

アッシュやリグレットの声が聞こえたような気がしたけど。
あたしは意識を手放した。





「聞こ・・・る?・・・お願・・・。」

誰?ローレライ?
ううん、ローレライじゃない・・・あなたは・・・。





!大丈夫ですか?」

ガバっと、あたしは起き上がった。

「ッ・・・。」

「どこか痛みます?」

「大佐・・・大丈夫です・・・ちょっと頭痛がしただけで。」

何か、何か思いついたのに忘れてしまった。

「・・・そうですか・・・。」

「ルーク!」

2人で声の方に顔を向ければ。
ルークも目を覚ましたようだ。
2人のやりとりをぼんやりと眺める。

「殺らなければ殺られるもの。」

「お前・・・人の命を何だと思って!」

説教に大佐も加わっている・・・。



私は自分の両手を見た。
汚れた両手。
荒れた両手。
でも、そう・・・本当に汚れるのはこれからだ。
覚悟がいる。



「ルーク。あたしの世界には、ううん。あたしの国は戦争がなかったの。
だから、あたしも怖いし。出来ることなら殺したくなんてない。」

「だったら・・・!」

「でもここはあたしの世界でもあたしの国でもない。貴方も同じよ。
ここは貴方の屋敷じゃない。でも今はここを生き延びなくてはいけない。」

あたしには、失って怖いなんて思うものは無いから。
あなたはそれがある分、きっと幸せなのよ。
人を殺すことを、純粋に怖いと思えることが、悪いなんて誰にも言えない。
本当は、誰だって「仕方が無い」じゃ片付けられないって知ってるのよ。
貴方がまだ、気づいてないだけで・・・。

の言う通りよ。戦場に正義も悪もない、生か死か、ただそれだけ。
戦争でこれ以上の犠牲を出さないためにも、私たちは今、生きなければ。」

「・・・じゃあ行きましょうか。」



ジェイドの命令でタルタロスが緊急停止。
「イイモノ」で隔壁を破壊して外へ、あとはリグレット達を待つだけ。



大佐の計画通り、全員で飛び掛り場を押さえるが、アリエッタの登場で戦況が混乱。
あたしは下を向いた。
空から必ず来てくれる、彼を信じて。



帆の間からチラチラと地面に影を作る日差し。
影!
あたしが顔を上げるとガイがリグレットを退けたところだ。

「ガイ様、華麗に参上!ってな。」

「ガイ!」

ルークもうれしそうに叫ぶ。
ガイのおかげであたしたちは何とかこの場を逃れることが出来た。

「イオン、大丈夫?」

「ええ、僕は大丈夫です。」

「ティア・・・貴方は?」

「・・・平気よ。」

教官が彼女にとって姉のような存在であったのだと、あたしは知っている。
否、むしろ母親のように感じるところもあったのではないだろうか。
今の彼女は、強がっていても、とても辛いはずだ。
大好きなお兄さんを敵にまわしているのだから・・・。



ここでボンヤリしているわけにもいかないので、あたしたちはセントビナーへと歩き始めた。
タルタロスで抵抗して、ダアト式譜術を使ったらしいイオンが大分疲れているようだったので、
あたしたちは適当な木陰で休憩を取ることにした。



適当な自己紹介。
あたしはガイによろしく、と言っただけで済ました。
知ってる分、やるべきではない、と。
彼の優しさに甘えればいいと、そうは思えなかったから・・・。



「別の世界!?そりゃまたえらい話だな。」

さすがのガイも驚いている。

「まぁ、そのことについては・・・いずれあたしの口からもっと話さなきゃって思ってるから。」

。人には誰だった話たくないことくらいあるはずです。無理に話すことはないですよ。」

「・・・ありがとう、イオン・・・。」

「そうよ、。貴女が話せるときが来たら・・・それでいいじゃない。」

「ティアも、・・・ありがとう。」



しかし、悠長に話してはいられなかった。
待ち構えていたオラクル兵に見付かってしまったのだ。
あたしも、戦闘に集中して攻撃する。
自分がトドメを刺していなくとも、自分が殺したという重みを忘れないように。



「ルーク、とどめを・・・。」

ダメ!
その声で反射的に振り返った。

「ぼっとするな!」

ガイが切りかかる。
ティアが庇いに出る。

無意識だったと思う。
何度も飛び出すなって教わったはずなのに、おかしいな。

ティアとあたしは一緒に倒れこんだ・・・。

「ティア・・・・・・俺・・・。」

「この馬鹿・・・!」



ティアはかすり傷、あたしは背中を切った程度で済んだ。
そりゃ血は出たけど、そんなの痛がってたらやっていけない。
ティアのファーストエイドで直してもらって、痛みも大したことじゃない。



「ごめんね、ティア。」

「・・・え?」

「あたしが飛び出すようなとこじゃなかったのに、さ。」

「・・・そんなこと無いわ!」

「そ、そうだよ・・・。元はといえば俺が・・・。」

「・・・それは違う。ルークが悪いわけじゃないよ。」

「ええ。貴方が民間人だって、ちゃんとわかってなかったあたしもいけなかった。」

「ティア。」

「・・・とりあえず、今日は休みましょう。」

「うん・・・。」




あたしはそのまま、横になった。
こんなに星の見える、綺麗な空の下にあたしは居るんだ。
星を隠すことをしなかったこの世界に。



飛び出したのは無意識。
否、自己満足といえばそれまでだ。
あたしは、一体何がしたいんだろう・・・。
ギュっと目を瞑った。
さっきアッシュと接触したせいだろうか。
ううん、こっちに来て寝るときはいつも、誰かが死ぬ瞬間ばかり思い出してしまうのだ・・・。



契約って何?あたしは何をすればいいの?
まだ、わからない。わからないよ・・・。










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2005/12/28

なかなかギャグやってらんないですよねー。重たい話でしたもんね。
多分、この連載はシリアスが強くなってしまうかもですね、単品でならギャグが出来るかもですが・・・。
ヒロインは当分、この世界にどうして来てしまったかわかりません。