対等契約
3
「あ、ほら見て見て!リンゴが落ちてるよ!」
あたしがリンゴを拾ってイオンに手渡す。
エンゲーブの焼印が入ってるとのことで、子細を確かめるためにチーグルの巣へ。
「ったく、しょーがねぇガキだな。」
と、ブツブツ言いながらも後を追うルークに。
あたしもティアも呆れ顔。
でもやっぱり、ルークはイオンの事は結構大切に思っているみたい。
何か感じるところがあるんだろうか、同じレプリカ同士・・・。
イオンも、最初からルークが根(っても、先の先の糸のような根)は優しいってわかってるみたいだし。
ティアだって、なんだかんだ言って、きっとそれを感じてるんだわ・・・。
複雑な思いを抱きながらチーグルの巣に入り、長老と会話。
イオンがユリア・ジュエとの契約がうんたら、とか言ってる。
あたしはチーグルをみわたしてキョロキョロ。
結局ソーサラーリングを履いた(?)ミュウと共にライガ・クイーンのところへ・・・。
「ミュウですの!よろしくですの!」
「あたしは、よろしくねミュウ。」
持ち上げればふわふわで軽く、かわいいヌイグルミみたい。
でも、あたしの意識は別のところに行っていた。
そう、初のボス戦。そしてアリエッタのママ・・・。
こっちのイオンはこのこと、知ってたんだっけかな・・・。
急ぎすぎたプレイがたたって、細かいところがあいまいだ。
「、大丈夫ですか?」
「え、あああ!ごめ、大丈夫!」
青白い顔のイオンにまで心配されて、あたしは気持ちを入れなおした。
いくら大佐が助けに来てくれるってわかってるからって、手を抜くわけにはいかないんだ。
相手がモンスターであれ、命のやり取りをするのだから・・・。
「どうやら、この先で間違い無いようね。」
ティアの言葉にあたしたちはうなずき、攻撃態勢を整えて先に入る。
想像以上に、ライガ・クイーンはデカかった。
ミュウを通訳に説得しようとしても、まったくもって取り合わない。
「卵・・・ってことは相当気が立ってるってことじゃない。」
あたしは相手を見据えて姿勢を低くした。
「イオン様はミュウと下がってて下さい!」
バっと前に出るティア。
「来るぞ!」
そのルークの声で、戦闘開始だ。
なんとかイオン達に被害が至らないよう削りに削って攻撃していくが本当に。
ちっとも効いているようには見えない。
「何とかなんねーのかよ!」
「えーい、わがまま言うな!」
ルークの発言に即座にツッコミを入れるあたしに対して、
後ろから声。
「なんとかして差し上げましょう。」
この登場が美味しいのよね、とか、とても35には見えないわ、とか。
言いたいことは山ほどあるけど置いといて。
あたしたちは大佐の詠唱を邪魔させないために3人で飛び掛った。
流石に4人もいればあっと言う間で、ライガ・クイーンを倒すことが出来た。
本当だったら、彼女も救って上げたいのだけれど。
これもまた、してはいけないことだ、とあたしの頭の中で何かが警鐘を鳴らす。
初のボス戦を切り抜けられた安堵感と。
新しい命まで奪ったしまったショック。
それにあの睡眠妨害のせいで、あたしはフラっと倒れた。
「大丈夫ですか?」
ドサっとそこらに転げ落ちるはずが、受け止めて下さったのは大佐サマ。
「ひゃ、ごめんなさ・・・だ、大丈夫です!!」
あたしは慌てて跳ね上がった。
か、顔が赤くなってなきゃいいけど(どうせ赤いだろうな・・・。)
ジェイドの方はいえいえ、とニッコリしている。
「さん大丈夫ですの?」
「うん、ミュウにまで心配かけちゃってごめんね。」
ぴょんぴょん跳ねて心配してくれるミュウをギュっと抱きしめる。
本当に、ダメだなぁあたし・・・。
もっと強くならなくちゃ、体も心も。
きっとそうでなければ耐えられないよ・・・。
大佐がアニスを呼び、何か指示を出している。
ああ、次はタルタロスだ・・・今度こそ、大きな揺さぶりがあたしを待っている。
休んでいる暇も、心の傷を確認している暇も、現実には無いんだ。
セーブもロードもきかない。
あたしはゲームの中の世界に来たんじゃない。
ゲームと同じ世界観の、現実に来てるんだ。
あたしたちは長老に報告を済ませ、さっさと森を抜けた。
入り口でマルクト兵に剣を向けられる。
「ジェイド!彼らに手荒なマネは・・・!特には・・・。」
イオンが止めに入ってくれる。
「あたしは大丈夫だから。」
体のことと、こっちの世界の人間じゃないことに気を使ってるんだ、イオンは・・・。
彼の優しさに涙が出そうなくらい。
あたしたちはおとなしく捕まり、森の外でお待ちかねのタルタロスに連れて行かれた。
「・・・というわけです、まぁとりあえずタルタロスを見てまわって、判断を下して下さい。」
あたしがわからないと思ってか、イオンが凄く丁寧に付け加えて話してくれて。
この世界にある2国間の争いの話や、ローレライ教団の話しだ。
いずれ、あたしがこの世界について知識あることは話しておかなければならないような気がした・・・。
それがいつになるか、わからないけど。
とにかくあたしたちはタルタロスの中を見てまわることになった。
「よろしくね、アニス。」
「うん、よろしく☆」
この元気で可愛いアニスだって、今この瞬間も苦しんでいるんだ・・・。
何も知らないって、時には凄く良いことだけど。
出来れば人は知っておかなければならないのだと思う。
でも知れば、それは残酷なまでに痛い現実でしかないこともある。
「かったりーな。」
とか文句ばっかのアホルークは流す方向で。
あたしたちはタルタロスの中をうろついた。
「すみません、まで巻き込む形になってしまって。」
「いいのよ、首を突っ込むために存在してるようなものだし。
イオンがそんな風に気負いすることないよ。」
「ありがとう、・・・。」
横目でルークを見れば、大佐と誘拐がなんたら、という話になる。
そっちを見てたらギャ、と思うことに大佐と目が合った(・・・。)
まぁとりあえず協力すると言うことになり、あたしたちは詳しい話を聞くためにさっきの部屋に戻った。
一通りモースがなんたらとかごちゃごちゃな話をしたあと。
「ああ、にちょっと渡すものがあるんですよ。」
はい、とジェイドから渡されたもの。
服。
「貴女のことはイオン様から聞きましたからね、その格好ではこれから色々と困るでしょうから。」
「どうもありが・・・。」
お礼の途中で周りが固まった。
「って、メイド服かよ!(へ、変態エロメガネ・・・)」
「まぁ私の趣味じゃありません。文句なら陛下にどうぞ。」
「陛下ーーーー!?(想像通りのご趣味で・・・)」
ゲームのこの時点ではどんなおっさんかと思ってましたが。
今となってはそんな想像はナッシングな方向で。
「まぁ制服よりはマシだろうから・・・。」
隣の部屋を借りて着てみれば、黒主体の中々普通のメイド服。
スカート丈とヒラヒラフリルはごめんなので、勝手に手を加えさせてもらった。
スパッツのまま着て、フリル部分はカット。
これでまぁ、なんとかマシになったでしょう。
「あれーフリル取っちゃったのー?」
アニスが第一声。
「アレじゃ流石に動きにくいもの。」
「似合ってますよ、。」
「・・・そ、そりゃどうも(ひき気味)」
ジェイドに笑顔にヒィーと思いながらもあたしは落ち着いた。
「どう、変じゃない?」
「そうね、やはり今までの服では目立ちすぎるし、いいと思うわ。」
ニコっとするティアにきゅんきゅんしながら。
まぁここはこれで妥協することになる。
お疲れのイオンは外の風に当たりたいとのことなので、あたしたちも後を追って外へ。
着替えたときに気づいた制服のポケットに入ってたもの。
ペンダント状だったから服に隠して着けておいた。
多分キャパシティコアだと思うけど、今はよくわからないからしまっておこう。
ローレライからの贈り物ってことで、自己完結。
さぁ、これから最初の大波乱が待ってるんだ。
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2005/12/28
ジェイドはヒロインの中で変態エロメガネで固定です(・・・。)大佐は勘が鋭いので色々気づいちゃうといいよ。
最後のCコアは適当です、ヒロインだけ持たせないのも難なので、そのうち外に出してかけさせます。
メイド服は趣味です(ピオニーっつーよりむしろあたしの)、まぁヒロインが適当に手を加えてるのでワンピースに近いかと。