聞いてしまえば、それは案外簡単なことで。
今までの心配や不安が馬鹿馬鹿しく思えてくる。
こんな風に私は十分幸せだというのに。
しあわせ未満 3
試合を見に来る女の子なんていっぱい居た。
あまりキャーキャー騒がれるのが苦手な俺は煙たく思ったこともあった。
そんな時初めてを見かけた。
自分の試合の時は、さすがに回りに目を向けていられないけれど、
ふと、試合の後、1人の女の子を見かけた。
いや、いっぱい居る女の子の中で、を見つけたんだ。
『どうした?幸村。』
ぼんやりその後姿を見送っていた俺に、声をかける柳。
『いや、今の子・・・。』
『ん?か、大方友達に付き合わされて付いてきたって、ところだろう。』
『知ってるのか?』
『ああ、同じクラスだからな。』
『・・・。』
もうずいぶん小さくなったその後姿を見送りながら、俺は呟いた。
それからすぐ、彼女がという名前だということ。
部活に入ってないこと。
どちらかといえば大人しいタイプだということ。
友達と一緒にいつも試合を見に来ていることを知った。
肝心な、彼女の目当てはわからなかったけれど。
それからずっと彼女を目で追うようになったものの。
接点が無さ過ぎてどう近づけばいいものか。
ずっと悩んだ挙句。
告白することを決めた。
突然、知りもしない男から告白されれば断られるのは目に見えているかもしれないけれど。
俺の予想に反して。
彼女の答えはYESだった。
屋上までの道のり、ぼんやりとそんなことを思い出していた。
の手は僕よりずっと温かった。
屋上に出て、の質問に俺は笑ってしまった。
「ふふふ。」
「ちょっと、幸村くん、笑い事じゃないってば。」
「ごめんね、今ちょうど昔のこと思い出してたから。」
『ねぇ、どうして私に告白したの?』
「昔のこと?」
私は首を傾げた。
私にとってそうとう気力を要した質問は。
彼の笑いでかき消されてしまった。
「そう、に片思いしてたころ。」
その言葉に私は苦笑いした。
「・・・正確には私も片思いしてたころ。」
「本当?」
幸村くんは一瞬びっくりした顔をして私を見た。
「う、うん。」
「・・・それっていつから?」
「えと、確か1年の幸村くんが初めて試合に出たときから。」
あの時のことは絶対に忘れないと思う。
何せ試合を見て、その格好良さに一目惚れしたのに、
普段の学校での物腰穏やかな彼の態度にはびっくりしたものだった。
「驚いたな・・・。」
口元に手をあてて笑う彼に、私は困った顔をした。
「そう?私の方こそ驚いた。だって幸村くんが私のこと知ってるなんて思ってなかったし。
だからあの時もてっきり冗談かと思って、あんまりびっくりしたから。」
「なんだ。」
「ん?」
「やっぱりが心配するようなことは無かったね。」
「・・・え・・・?」
「俺達はちゃんと、会ってすぐ好きになった。
例え付き合い始めたのは最近だとしても、それは形上の問題であって、
思い合っていた時間に違い無いだろう?」
ああ、どうして。
こんなにもこの人は・・・。
「?」
なんでかじわっと涙が出てきて、彼の心配そうな顔が霞んだ。
私は自分の情けなさで視線を落とした。
「ごめんね・・・なんでもないの。」
涙を拭って顔を上げようとした、
その瞬間。
すごく温かい感じを覚えた。
背中に回された手。
くっついてる体。
さっきは私の方が温かかったのに。
私は自然と幸村くんの背中に手を回して、
ぎゅっと、抱きしめ返した。
「幸村くん。」
「うん?」
「大好き。」
「うん・・・。俺もが大好きだよ。」
「面会時間終わちゃったね。」
「寂しいな。」
「明日も来るから。」
「え・・・?」
明日はいつも部員が早くから来て、は絶対に来ない水曜。
「その・・・みんなと、一緒に来る。」
複雑な表情で俺に訴えるに、笑ってしまう。
「ありがとう、。楽しみに待ってるからね。」
「うん。それじゃあ、また明日。」
「柳くん!」
「今日も早いな、。どうした?」
「あの、今日の放課後ね・・・。」
○最後のセリフはカットしました、これでおしまいです(微妙ですけど)
ちなみに、蓮二にこだわってるわけじゃないですよ(笑)
ゆっきーは大好きです、・・・もっとカッコ良いけど(駄文過ぎて表しきれない)
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