今考えても理由がわからない。
そもそもどうして幸村くんは私に告白したんだろう?
聞いて返ってくる返事が怖くて、私は未だに聞けないでいる。
しあわせ未満 2
『えっと、さん・・・だよね?』
『うん。用事って?』
『本当に突然なんだけど、俺と付き合って下さい。』
『・・・それは何かの冗談じゃなくて?』
『俺の本心。』
『・・・私でよければよろこんで。』
時々見ていた夢を久しぶりに見たせいで目覚めが悪い。
最も、私は低血圧で、朝には弱いのだけれど。
この夢を見て思い出すたびに、
何故、幸村くんが私に告白してくれたのか。
そればかり気になってしまう。
私と幸村くんは驚くほど接点が無い。
クラスは一度も一緒になったことは無いし、
委員も重なったことが無い。
その上、私は帰宅部。
私が幸村くんを知ったのは、1年の本当に始め。
思えばそのころから幸村くん、真田くん、柳くんは有名だった。
そして、そのころから、彼等の関係は始まっていた。
私といえば、友達がどうしても見に行きたい、というので付き合って、
その結果、幸村くんに惹かれるようになり、2年間ずっと片思いをしてきた。
私の気持ちは一方通行で、
ただ私はこっそり幸村くんの試合を見に行ったり。
校庭を通るたびにチラチラとテニスコートを気にしていた。
「おはよう。」
後ろから声をかけられて。
私は一瞬ビクっとした。
「おはよう、柳くん。」
「早いな。」
「そうでもないよ、柳くん、朝練は?」
幸村くんが入院してから素通りだったテニスコート前で立ち止まり。
私は尋ねた。コート内には部員に指示している真田くんが見える。
「ちょっとな。」
「?」
「昨日、あのあと幸村と話したんだが・・・。」
昨日、という言葉に私は身を硬くした。
私の態度は目にあまるものだったのではないだろうか?
「幸村が、今日もに来て欲しいと言っていた。」
「え・・・幸村くんが?」
「ああ、話があるそうだ。」
私はすぐ、別れ話かもしれないと、思った。
そう考えた自分が意外に冷めていて、笑ってしまう。
「それだけなんだが。」
「わざわざありがとう。忙しいのにごめんね。」
「いや。」
「放課後すぐ、幸村くんのところに行くから。」
「ああ、それとだな。」
「何?」
「今日俺達は見舞いに行かないから安心しろ。」
校舎に向かおうとしたら、呼び止められて、この発言。
しかも「幸村とゆっくり話して来い。」と続けてさっさと朝練に行ってしまった。
なんでわかるんだろう?
もしかしたら幸村くんも知ってるんだろうか?
そうかもしれない。
でも、自分でもどう表現すればいいかわからない感情を、
どうしてわかってもらえるだろうか。
今日の授業はほとんど上の空状態で。
放課後、一目散に私は幸村くんの待つ病院に向かった。
いつもなら、テニス部の状態を様子見しながら通るコートも、
急ぎ足で通り過ぎながら考える。
思えば幸村くんから会いに来て欲しいと頼まれるのは、これが初めてだ。
少し息を切らして入った病院は、相変わらず消毒臭い。
私は何も考えずに、まっすぐ幸村くんの病室に向かった。
軽くノックをして、返事が返るのを待って、私は扉を開けた。
「こんにちは。」
「いらっしゃい、急に呼んだりしてごめんね。」
「ううん、何も用事無いから平気だけど・・・。」
ふと、私は病室を見て違和感を感じた。
笑顔で迎えてくれる幸村くん。
真っ白で味気ない病室。
何も変わってない。
いや。
足りないものがある。
私の心を追い詰める。
山積みのお見舞い品。
「あの、幸村くん・・・。」
私が続きを言うより早く、彼は口を切った。
「昨日来た真田達に全部引き上げてもらったんだ。」
「え・・・、どうして・・・?」
「だってが、いつも気にしてたみたいだったから。」
困ったようにそう呟く彼の顔を、私は頭の中が真っ白になって聞いていた。
別れ話がなんだ。
短い関係がなんだ。
私は彼に十分に幸せを分けてもらっていながら、
ただそれを仕舞い込んでいただけ。
「?」
「ごめんね。」
「どうしてが謝るの?」
「わからないけど、ごめん。」
これはきっと彼を困らせてしまったことへの懺悔であり。
彼からもらったものを受け止め切れなかった私への非難。
「今日はね、の言いたいことを全部聞こうと思って。」
「?」
「俺がここにいるぶん、には辛い思いをさせていると思うから。」
ああ、どうしてこんな風に優しいのか。
「私は・・・。」
その優しさに引きずり込まれるように、私は口を開いた。
「ずっとね、ダメな存在だな、って思ってた。」
「うん。」
「いつもいつも、テニス部の人達と自分を比べちゃって。
別に嫌いとかそういうんじゃなくて、嫉妬でもなくて、なんて言えばいいのかな。
少しだけ、寂しくなるときがあって。でもそれは私の自意識過剰でしかないのに・・・。」
「は優しいから、俺に気を使って何も言わなったんだね。」
「私は・・・。」
「わがまま言ってくれていいんだ、ここにいるだけで、
俺にしてあげられることはすごく、少ないから。」
「私は別に何かしてもらいたい、とかそういうんじゃなくて・・・。
ただ距離を感じるのが怖かっただけ。」
幸村くんの病室にテニス部の人達からのお見舞いが増えるごとに、
それに比例するように私の心配は募るばかりで、
このままでは私の居場所が無くなってしまう。
そんな風に、自分勝手に考えてしまう。
「彼女」というポジションに甘えているだけでは、ダメなのだとわかった。
「・・・俺は、思っている程、距離があるとは思ってないから。」
「うん。」
小さな空間に居づらくなった私の気持ちを察してか、
幸村くんは私の手を取って屋上に向かって歩き出した。
「確かに部員との付き合いの方が長いし、親しいと思うけど、
の存在自体で十分、それと同じくらいの重さを俺は感じてるよ。」
「ありがとう。」
消毒臭いところから開放されて、私はため息をついた。
私は幸村くんの手をギュっと握って・・・、
いつか聞かなければならないことを、思い切って口に出すことにした。
ここで聞いてどんな結果になっても、
多分、後悔はしないだろうから。
「ねぇ幸村くん、私ずっと聞きたかったことがあるんだけど。」
○蓮二夢ではありません、なんか友情出演。真田とか、マジおまけ(ヒド)
次で終わり、なんてかヤマナシオチナシイミプーって感じ(トホホ・・・)
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