理由なんて何もなくて、ただ眠くてしょうがなくて。
私は精市を待ちながらうとうとしていた。
雨の音が聞こえる
うとうとと机に突っ伏していると、ふと、サーっと音が遠くのほうで聞こえた。
寝ぼけた頭で私は何の音だろうと考えたものの、すぐに意識はどこかへ行ってしまった。
「?」
声をかけられて、私は夢から微妙に引き戻された。
(おそらくだらしないであろう)顔を上げて、ぼんやり目をこすった。
精市がいた。
「精市?」
声が掠れている。
寝ぼけたまま私は時計に目をやった。
「あれ?」
「どうしたの?」
「いや、だってまだ部活の時間じゃ・・・。」
言いかけて。
精市が外を見てごらんというので私は顔を反対側に向けた。
まるで砂をこぼすように、さらさらと小雨が降っている。
そういえば寝入る直前に水の音がしてたっけ。
この雨だったんだ。
「中止?めずらしいね、小雨程度で。」
私は精市の方に向き直って続けた。
普通、小雨程度では中止にならない。
というか、真田くんとかぜったい雨でもやりそうだ、彼は・・・。
「今度の大会もあるし、最近風邪がはやってるから、大事を取ったんだよ。」
こうして話をしている精市を見ると、やっぱり部長だなぁ、と思う。
私なんかとは大違いだ。
「じゃあ、今日はもう帰るの?」
私は荷物を適当に鞄に放りながら、そう尋ねた。
「うん、がもっと居たいっていうならつきあってもいいけどね。」
「冗談、帰ろう・・・って、あ。」
「どうしたの?」
「傘持ってないや。」
「あー・・・俺折りたたみ持ってたかな・・・。」
「や、いいよ。わざわざ取りにいくの面倒じゃない、どうせ部室でしょ?」
「そうだけど、2人で入ると濡れるだろう?」
「へーきへーき、そうそう風邪ひくような女じゃありませんよ、私は。」
「・・・がかまわないなら俺はいいけど。」
「そうそう、そういうこと。」
私は大げさに言いながら、鞄を肩にかけて、席を立った。
「ま、私が精市と相合傘したい、ってことで許してよ!」
「はいはい、じゃあそういうlことにする。」
「そういえば、さっき夢見てた?」
精市は必ず傘を持ってくれる。
その傘の柄越しにそう聞くので、私はきょとんとした。
「え、なんで?」
「なんか幸せそうな顔してたから。」
「うーん。あ、見てた見てた。」
こんな風に相合傘で帰っている夢だった。
「しかもこんな感じで帰る夢。」
「へー、正夢だね。」
「そうだね。」
「あ。」
精市が急に隣で声を出すもんだから、私はびっくりしてしまった。
「俺も昨日の夢見たよ。」
「・・・どんな?」
期待と不安の入り混じりながら、信号を待ちながら、私は真剣な顔になった。
「変な夢。なんかが真田に追い掛け回されてた。」
「・・・。」
ちょっとでも期待した自分が馬鹿だった。
一体どんな夢だ、そりゃ、と突っ込みたい気持ちで一杯だったけど、
とりあえず真田くんが何故私を追い回しているんだろうか、スカートの丈でも気に入らなかったのかしら?
「まあ、これは正夢じゃなさそうだけどね。」
「正夢だったら私の身が危ない・・・。」
「ははは、大丈夫だよは。」
「(それはどういう意味で・・・?)そ、そうね。」
「じゃあ良い夢見る方法とか考えようよ。」
「俺は金縛りに合わないようにする方法くらいしか知らない。」
「(どんなだ!?)何それ。」
「枕の下にお守り置くんだってさ。」
「へぇー。あ、じゃあ私精市の写真を枕の下に入れようかな。」
「(それで良い夢見られるのかな)まあ試してみなよ。」
「うん、ちょっと頑張っちゃうね(何を)」
「結果が良かったら俺もの写真枕の下に入れようかな。」
「・・・精市は私の写真なんて持ってないでしょ・・・?」
「いや、前にの友達にもらった。」
「(ひぃ、誰だよ!?)・・・変な写真?」
私は微妙な心境でたずねた。
というか、大体予想はつくんだけどね。
ああ、これは実は嫌がらせなのかしら・・・。
「普通にピースで写ってるよ。」
「(良かった)。」
「そういえばは俺の写真なんて持ってたっけ?」
「うん。(キッパリ)」
「・・・誰にもらった?」
「写真部の友達、まだ片思いだったころだけど、土下座までして写真取ってきてもらった。」
「ふーん。」
「今思うと愛溢れてたね。」
「なんだかそれってもう愛が無いみたいな・・・。」
「そんなことないよ、ってもう着いちゃったね。」
「送ってくれてありがとう。精市も気を付けて帰ってね。」
「どういたしまして、も今日は早かったからゆっくりしなよ。」
「そうしたいとこだけど、今日は宿題に埋もれそう。」
思い出すのもイヤになるほどだ。
私がふくれた顔をしていると、精市は笑った。
「じゃあ、また明日。」
「うん、また明日ね。」
お風呂上りに今日の会話を思い出して、精市の写真を枕の下に置いた。
寝相が悪いので、枕ごとベッドの下に落ちていたらイミがないのだけど・・・。
「おはよう、。」
「おはよう・・・。」
玄関前で待っていた私は、相当ブルーだった。
「その感じだと良い夢見れなかった?」
「全然よ。精市は出てきたんだけどね・・・。」
「それで?」
「真田くんが私を正座させて怒ってて、しかもなんか
『もっと大人しくならないと嫁に行けんぞ』とか言っちゃって、意味がわからなかった。」
「正夢じゃないといいね。」
「うん。やっぱり雨の日はだめ。」
「?」
「いっつも、いい夢見ないの、昨日のうたた寝といい、テンション下がるなー・・・。」
「あ、真田。のこと見てるんじゃない?」
「えぇ、何かやな予感するから先行く。」
「はいはい。」
私の突拍子の無い行動に慣れている精市は、あっさり受け流す。
雨の日って本当に夢見が悪いな・・・。
○ちなみに真田はオマケで出してみただけです(ヤラレキャラ!?)誰でも良かったんですけどね。
今回はなんかうまくまとまらなかったです・・・うーん、雨の音って私は落ち着くんですよね、結構。
でも、何か夢とかは微妙なの見そうかなとか(笑)私はあんまり見ないので、なんともですが。
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