対等契約 単発夢





痛みを感じる優しさ










「相変わらず青白い顔して、大丈夫か?」

とぼとぼと歩いていると、ガイに話しかけられた。

「ん、心配してくれてどうもありがとう。ただの寝不足だし。
もうすぐバチカルに着くから大丈夫だよ。」

ちょっとした用事にバチカルに寄ることになっていた。
アルビオールは少し離れたところに止めるし、バチカルは広いし。
まぁ、歩くくらい何の問題もないのだが。

「また寝不足か・・・。君もいい加減精密検査をしてもらった方が良さそうだな。」

「あはは、平気よ、平気。」

たかが寝不足くらいで大げさだ。
まぁ、実際タダの寝不足じゃないかもしれないし、
大佐やガイなんかは察しが良いから、ちょっと疑われてるんだろうけど。

「俺が負ぶってあげられれば、済むんだろうけどなぁ。」

そう言って気を使うガイ。
この人の優しさは時に、酷く痛いと感じる。

「いいのいいの、いつかガイが克服する日がやってきたら是非そうしてもらうから。」

話を聞いていたアニスが、私も私も、というので、一同笑ってしまった。





バチカルに到着、ルークがお母様に会いに行ったり(・・・奥義書の金をせびりに・・・)
否、まぁ親孝行ってことで。
色々と買い物も済ませたりなんだりで、気がつけばもう夜。
ルークやガイはお屋敷へ、ナタリアはお城へ。
それぞれ泊まる場所はバラバラで、残りは宿屋ということになった。

「それでは、また明日港で合流しましょう。よろしいですわね?」

リーダーナタリア!と、まぁこのネタも大分落ち着いてきたけど、
彼女の一斉でみんな散り散りになり、部屋に。
ティアも、体調があまりよくないのだろう、珍しくすぐ寝入っていた。
念のためアニスもよーく寝てるか確認して、こっそり宿を出る。
今日は広い宿だし、大佐にもバレずに済みそうだ。





。」

「ひゃ!」

こっそり宿を出て、ほっと一息ついたところでお声がかかった。

「こんな遅くにどこ行くんだ?」

「ガ、ガイこそ、一体どうしたの?」

「君がまた夜中に特訓、なんてことになってたら困るんでね、様子を見に来たんだよ。」

呆れ顔のガイに、あたしはあはは、と誤魔化す。
どうせ早く寝たところで、この疲労が回復されないってわかっている今。
体を動かして居た方が落ち着くと思って、毎晩こっそり抜け出していた。

「じゃ、今日は無し。散歩だけにするから見逃して?ね!」

拝むように両手を合わせて片目で見上げても。

「だめだ。・・・まぁ、散歩なら俺も付き合うよ。」

宿に帰れ、と怒らないところがガイの優しいところかもしれない。
まぁ、そう言ってもあたしがまたこっそり抜け出てくると思ってるかもしれないのだけど。

「ん、じゃあお言葉に甘えて、ちょっと付き合ってもらおうかな。」



散歩と言えど夜、町の外に行くのはダメ、ということで、あたしたちは天空客車で港へ。



「夜の海は穏やかだね。潮風も気持ちいいし。」

「そうだな。」

「・・・。」

会話が続かない。
下手な話をすれば、ボロが出そうな気がしていた。

「君は、無理をしすぎだな。」

断定的な発言にあたしは首をかしげた。

「どうしてそう思うの?」

「こっちに来てから我侭言ったか?言ったとしても、数える程もないくらいだろう。
はただでさえ、こんな長旅に巻き込まれるべきじゃなかったのにな。」

「首を突っ込んだのもあたし、体調管理もあたしの責任よ。」

あたしの発言にガイが苦笑する。
遠まわしに、何か別のことが聞きたいだろうってことは、直感でわかっていた。

「あたしのこと、ちょっと怪しいって思ってるでしょ?大佐も、かもしれないけど。」

「・・・お見通しか。」

「まぁ、自分でそういう態度を取ってるってことくらい、わかってるしね。」

自己責任。
全部言ったら楽になる?
否、むしろその逆だろう。
しまっておけるうちは、しまっておきたい。

「一つだけ、言っておこうかな・・・。」

海に背を向けて、あたしはガイと視線を合わせる。

「あたし、最後まで言えないことがあるかもしれないわ。
だから、ごめん、って・・・とりあえずガイには言っておくね。」

「最後って、君が自分の世界に戻るとき、ってことかい?」

「そればっかりは、今のあたしじゃわからないんだけどね。」

「・・・遺言みたいなのだけは勘弁してくれよ。」

「あはは、そういうつもりはないから、ただ、どうなるかわからないから。
誰かに言っておきたいと思って、ガイに言っちゃった。ごめんね、意味深で。」

「いいさ、それで少しでも、の気が楽になるなら、な。」

「ありがとう。ガイをあんまり拘束するのもなんだし。そろそろ戻ろうか。」

「ああ、ちゃんと寝るんだぞ。」

「はーい。」



また来た道をとぼとぼ帰って、宿屋の前へ。
この綺麗な星空の下。
まだ、あたしはここにいられるのね。



「おやすみなさい、ガイ。」

「ああ、おやすみ、。」


片手を挙げて、上へ行く天空客車に向かうガイ。
あたしはただ、その背中を見つめていた。



もう一度見上げても星空。
変わらないもの、変わるもの。



いつか話せるときが来たら、話す。
来なかったら、話さない。
どっちも自分勝手。
だから、きっと、あたしは最後まで、我侭を通すと思う。



あなたの優しさが痛いと感じるのは。
あたしが、貴方を好きで、貴方に嘘を付いていることが苦しいからだなんて。
そんな都合の良い話は、きっと、口にすることは無いかもしれない。











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2005/1/15

相変わらずガイ様はむつかしいですね!そして相変わらずネタも重々しいですね(イタタ)
何故か今のところ幸せいっぱいの夢を書いた記憶が無いのですが。。。!
(いや、アホなギャグは書いた記憶がないんですけどね)
夢サイトといいながら痛々しい話ばかりですが、今後もこの方向かと・・・(;´Д`)