095. 星の記憶








「下らない。」

「突然意味不明な事言わないでくれる?」

向かいに座って、あたしの発言をサラっと流すシンク。
端整な顔立ちだと思う、隠すのが勿体無いくらい。

「ちゃんと説明しなよ。」

聞きたくないのかと思って黙っていればこのセリフ、あたしは苦笑する。

「星の記憶、なんて下らないって思っただけよ。」

「唐突過ぎる。」

「何故?記憶は誰にでも、大抵あるじゃない、星にあってはいけないの?」

あったっておかしくないじゃない、だから下らないって言ってるの。
あるから、はいそうですか、記憶通りに生きているんですか、って思うからつまらないんだよ。
あっても、そんなの信じない、あたしたちは自分で選んで進んでるんだって、
それくらい自信の持てる人生にすればいいじゃない。

の考え方はポジティブ過ぎる。」

「あら、別にシンクがネガティブだって言ってないわよ。」

それにムっときたのか、シンクが黙った。
あたしはティーカップを持ち上げる、自分の顔が映っている。

「大体、規模が大きすぎてあたしにはイマイチ、ピンと来ないのよね。
星は、記憶を持っているんだ!って言われても、はぁ、それで?って感じ。」

は頭悪いから。」

「失礼な。」

言い返して、ついつい昔を思い出す。
昔って言っても2年も前じゃない。
新米だったあたしが図書室で調べ物をしている時だった。





「な、なんでこの本にも載って無いんだろ・・・。」

頼まれた資料の掲載されている本を探せってもので、
あたしはひたすら本棚を漁っていた。

「そこ、邪魔なんだけど。」

あたしが資料を散らかしていると、仮面少年が近づいて来た。
えーと、名前忘れたけど、偉い人だったと思う、多分。

「聞いてる?」

「うん・・・じゃなかった、はい。」

うん、と返事をしたことに対しては、怒った様子は無いのに安心した。

「・・・何してるのさ?」

そう聞かれて、あたしが答えると、彼は本棚からさっと1冊抜き取った。

「・・・。」

「・・・。」

受取って黙る、あたし。
同じく黙る彼。

「・・・間違った棚探してた・・・。」

「あんた相当頭悪いね。」

「む、失礼な。そもそも、あんたじゃなくて。」

「ふーん。」

興味ない、というその態度に、あたしは呆れる。
この子親切なのか、嫌味なのか、わからん。

「・・・君は?」

「・・・本当に頭悪いのか。」

「いや、勝手に納得して・・・って、ちょっと、名乗らずにどこいっちゃうのよ!!」

本を持ってダッシュで図書室の外に行ったけど、もう居なかった。
入り口の兵士に聞けば、シンク様なら本部に向かったのでは?言われた。

しんく・・・。

シンク?

ああ、思い出した、やっぱお偉いさんだ、ここの参謀じゃない。





それからちょっと経って、あたしは六神将の補佐になった。
もともと、雑用とか、事務とかの合わない、好戦的な性格だったので、
この配属に特別、困ることはなかったが・・・。





「今日から、補佐をすることになったです・・・あ。」

「・・・ああ、こないだの頭の悪い女。」

「だから、だって言ってるじゃん!」

部屋に入って、挨拶したらシンクしか居なかった。
六神将は暇ではないようで、部屋に集まってる、なんてことは無いようだ。
後でわかったけど、全員仲良しこよし、じゃ無いし。





「思い出し笑いとか、本当に馬鹿に見えるからやめなよ。」

「本当に失礼ね。」

「僕は本当のことしか言ってない。」

「・・・。」

まったく、可愛く無いと思う。
もちろん、自分もなんだけど・・・。

「星の記憶なんてどーでもいいのになぁ。」

「僕の前はともかくとして、ヴァンの前では言わない方がいいよ。」

本当に、頭悪いな。と続けるシンク。
その発言に、ふふふ、と笑ってしまう。
例え、可愛げがなくても、嫌味でも、なんでもいい。
シンクは優しい。

「心配してくれてるんだ。」

「・・・違う・・・。」

「照れなくてもいいじゃない。」

「・・・。」

あたしは、自分が頭に浮かべば口に出すから、何度かマズいこともあった。
ヴァンに切り捨てられるのは、別に構わないのだけど、殺されちゃ困る。

「あたし、頭悪いからシンクに迷惑かけるけど、これからもかけるからよろしく。」

「は?」

シンクが呆れ顔で聞き返すのをスルー。
ともかく、ずっと迷惑かけ続けます、と言ったら。

「改めて断らなくても、わかってる。」

と言われて、嫌味だったのかもしれないけど、嬉しくなった。





これが星の記憶でも、何でもいい。
この一日や、一語一句が星の記憶だなんて、正直信じてないし。
どっちだっていいんだ、要は考え方。
あたしは、これからも、こんな風にシンクと過ごせればそれでいい。
星単位の大それたことなんて、あたしには関係無い。
無責任だといわれても、あたしにも、あたしなりの幸せを持つ権利くらい、あると信じて。











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2006/2/2

なんだかどれも似たり寄ったりの話になって来ました・・・。
傾向とキャラに特徴が無くなってきているといいますか・・・スランプの予感です・・・(;´Д`)