044. 雨の出会い
「びっくりしてたね、あっちの子」
「・・・。」
「何よ、怒らなくてもいいじゃない。」
陸艦に戻った私の第一声は彼の機嫌を損ねたようだ。
最も、こっちもご機嫌取りするような人間じゃない。
「確かに顔は同じだったけど、感じが違った。
やっぱ育つ環境によって変わるのね。」
「煩い。」
「ムキになるのね。あっちの子のことになると。」
「お前に何がわかる。」
私に背中向けたまま。
フンと、怒って、彼はそう言った。
「わからないわ。わからないから知ろうとして、何がいけない?」
「無神経な女だ。」
「そうかもしれないわね。」
「・・・。」
「・・・。」
沈黙が続いた。
ここにはシンクもラルゴも居ないし。
さっき掻っ攫ってきた導師イオンも、おとなしく別室で控えてもらってる。
「・・・悪かったわ。」
「ああ?」
やっと私の顔を見て、発っせられた第一声がこれ。
「謝ったのよ、悪かったって。他人の心に土足に入るような真似、確かに失礼だったわ。」
「・・・フン、お前が謝ると気持ちが悪いんだよ。」
「悪かったわね、気持ちが悪い女で。・・・私、導師イオンに会ってくる。」
「余計なことは喋るんじゃねぇぞ。」
「はいはい。」
ドアに手を置いて。
今度は私が背中を向けたまま、声をかける。
「ねぇアッシュ。」
「何だ、まだ何かあるのか。」
「あっちの子、嫌いなの?」
「・・・。」
沈黙。
そう、あっちの子はあっちの子で、アッシュはアッシュなのに。
「愚問、だったか・・・。」
「。」
「何?」
「お前何処まで・・・。」
「さぁ、どこまでかな。」
答えの途中で私が口を開いた。
睨んでくるアッシュ。
知っている。
もちろん、知っている。
「まぁ何にせよ、あっちの子が邪魔してくるって言うなら、倒すのみ、か。」
「当たり前だ、邪魔なんぞされてたまるか。」
「・・・。」
「止んだわね、雨。」
「ああ。」
「アッシュ、無理は・・・しない方がいいと思うわ。ただの忠告だけど。」
「・・・お前・・・。」
「あたしにも時間が無い、最も、あたしはレプリカ情報を抜かれたけど、
あたしの情報から出来たあたしそっくりのはずのレプリカは失敗作の化け物だった。」
「ディストが実験台にしたのか。」
「ええ、そうよ。」
「殺したのか。」
「もちろん、相手に殺意があったもの。」
「そうか・・・。」
言葉に詰まるアッシュに私は笑った。
「出来ればやらない方がいい経験よね。」
「泣いたんじゃないのか?」
「え?」
私はその言葉に驚いて、目を見開いた。
「・・・どうしてそう思うの?」
「お前が前にそんな顔でレプリカ研究の音機関を睨んでいるのを見たことがある。」
「そう・・・あの時見てたの。」
恨んでいた。
憎んでいた。
レプリカ研究そのものを、では無い。
実験台にされたこと、でも無い。
レプリカすらまともに誕生しない自分の存在を、だ。
「もともと、あたしの方がデータもまともに取れない出来損ないだったからね。
悪いことしたと思ってるわ、殺してしまったレプリカには。」
「悪い?」
「勝手に与えた生を、勝手に奪ったんだもの。」
「・・・。」
「こんな話するつもりじゃなかったのよ、ただ。
多分あたしの方が先に死ぬから、それだけ言っておこうと思って。」
「どれくらい、と言われたのか?」
「自分でわかるでしょう?」
「・・・そうか。」
だから時間が無いと。
だから焦るのよ、この先貴方も。
「忠告として、受け取ってくれればいい。じゃ、もう行くわ。」
導師イオン、彼にも話したいことがある。
・・・残された時間を有効に使うためにも、ね。
扉が閉まる。
背を向けて私は廊下を進んだ。
折角2人とも生きているのなら、生きているうちに争うなんて、
下らないことはやめてしまった方がどんなにいいか。
きっと、まだわからないのね。
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2006/1/9
意味不明落ち無しです。次はレプリカヒロインでやりたいんですが。
何か死が先に来る方のヒロインで、アッシュを客観的に見る〜みたいな(謎)
すみません、意味不明ですやっぱり・・・!orz
やっぱり、アッシュ書きづらい、っていうかこのお題チョイスが失敗でした・・・!
ヒロインがルークをあっちの子って呼ぶのはアッスに気を使ってです(笑)