012. 料理









「ちょ、この豪華な料理は何!?」

アニスがイオンの部屋から叫び声を上げた。
本日は折角ダアトに遊びに来たので、みんなで食事となったわけで。

「うおっ!誰だよこんなの用意したの。」

ルークも驚いて叫んでいる。

「あら、言ってませんでした?今日はに食事当番を頼みましたのよ。」

ね、というナタリアの声に、ドアの先から声が返ってきた。

「はい、承りましたよ。」

最後の料理を両手に持って、がひょこっと顔を出した。

「ってことは、これ君が作ったのか?」

ガイの質問にはコクリと頷いた。
なんとなくこんな反応をされるのではないかと思っていたからだろう。
どこか楽しげだ。



「冷めないうちに召し上がって下さいな、みなさん。」

コトっと、音をたてて、大皿を2つ追加すると、はそう言った。

「でもよー。何でがこんな凄い料理作れるんだ?メイドだろ?」

ナタリアの。と追加しながら、ルークが最初にイスに腰を下ろした。
それを見て、みんなもぞろぞろと食卓に着く。
はにこにこと笑いながら、最後にイスを引く。

「あら、そういえば言ってませんでしたわね。はうちの料理長の娘ですのよ。」

の代わりに、ナタリアが答える。

「それは知らなかったな、じゃあ、お父さんに教わったのかい?」

「はい、物心ついたときから、包丁を握らされてきましたからね。」

ガイの質問にそう答えると、さぁ、どうぞとが言うので、
待ってました、とばかりに食事が始まる。



「私の料理は、料理長ではなく全てが作ってましたのよ。
ですから、外でもの料理が食べられて嬉しいですわ。」

「勿体無いお言葉です、ナタリア様。」

旅にくっついていて、唯一ナタリアを様付けしてるのがだった。
まぁ、は場を弁えたタイプの人間だと、大佐も判断しているのか、
お咎め無しでこうして、メイドとしての態度を変えないのだ。

「なるほど、お城の料理を口にしている、ということになるわけすか。」

「わーい、もう、いっそが毎日料理当番になってよ!」

アニスもはしゃいでいる。

「でも、何で今まで作ってくれなかったんだ?」

ルークがもっともらしい疑問を言う。

「ナタリア様のお料理をお手伝いしていましたから。」

その言葉に一同納得。

「良いことだわ、私だってに習いたいって思うもの。」

「嬉しいお言葉です、でも私はティアさんの料理もとても好きですよ。
でも、料理は人から習っただけでは自分の物にはなりません。
武道と同じですね。技も、自分のものにしていくのが基本ですから。
自分だけの料理は自分の手を加えて出来るものだと、
私は思っているんです。まぁ、半分は父からの受け売りですが。」

はにこにこと笑う。

「その通りだろうなぁ。」

「素敵なお父様ね。」

ガイもティアも頷く。





食事は進み、デザートまで完食。
みんなそれぞれの話題に花を咲かせる。

「イオン様、さっきから嬉しそうですね。」

黙って嬉しそうにしているイオン。
アニスが顔を覗き込む。

「僕は、こうして皆さんと食事をしている時間がとても幸せなんですよ。
会食では人数はいても、こうはいきませんからね。」

それには一同頷いた。
まるで家族のように、楽しく食卓を囲めることは、幸せなことだと。
そう、みんなが思っているんだろう。

「またすぐ遊びに来るよ、いっそイオンも一緒に行ければなぁ。」

ルークらしい言葉だ。

「ルーク!」

「わかってるよ。」

口では怒っていながらも、ティアもわかっているのだ。
が、そうはいかないことも、同時にみんなよくわかっている。
イオンの体のことさえなければ、そうしたいのは山々なのだ。





「じゃ、片付けますね。」

が立ち上がる。

「私も手伝うわ。」

ティアも一緒に席を立った。
結局、女性陣が主に洗物など、男性陣が食卓の片付け。
という分担になり、てきぱきと片付ける。

が白いテーブルクロスを抱えて部屋に戻ってきた。
バサっと広げて、新しいものに交換する。

「そんなに汚したか?」

ルークがすまなそうに声をかける。

「あ、いえ。癖というか、習慣なんです。食事を終えた後、新しいテーブルクロスに交換するの。」

「そういえば、いつもそうでしたものね。」

ナタリアも頷く。

「何か理由でもあるんですか?」

イオンも興味があるようだ。

「さぁ、私も良くわからないのですが、白いテーブルクロスで、一度食卓を囲むと、
その料理の色が、テーブルクロスに移るんだそうですよ。」

変えたテーブルクロスを丁寧に直しながら、は説明する。

「香りではなく、色というのが面白いですね。」

「そうですね、だから、色の移ったテーブルクロスにまた別の料理を載せるのは失礼だって、
母はよくそう言っていました。私にはまだまだ、理解できていないのですが。」

「気持ちを新しくして、毎度の食事を楽しむための秘訣、みたいなものかもしれないな。」

「ええ、ガイさんの仰る意味と、近いのだと思います。」





片付けも終わって、宿に引き上げる。

「イオン様」

「何です?」

「私が今日テーブルクロスを変えたのは、ただの習慣だけではありません。
また、ここでみんなで食事をしましょうという、意味も込めてです。
あんな風に、みなさんと嬉しそうにお食事を取られているお姿を見て、
私も料理させて頂いた甲斐がありました。」

にっこりと、はそう言った。

「ありがとう、。お気遣い、とても嬉しいですよ。」

「イオン様、またみんなで遊びに来ますからね!」

アニスもそう言って元気付けている。

めいめい、イオンに声をかけ、教会を後にした。
また、食卓を囲む日を楽しみにして・・・。
新しい真っ白なテーブルクロスに、新しい色が移るのは、そう先ではないだろう。










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2006/1/15

ちょっと感じを変えて書いてみました。私は料理全くダメですが!(じゃあ書くなよ!)
捏造ネタですが、みんなで仲良く食事、というネタが浮かんだので、それとなく。
なんだか何を書いてもイオンが贔屓目のようですが(笑)
まぁ、そこはツッコミ無しの方向で!
そ、そういえばうちのサイトで珍しくほのぼの系っぽいですね!(ほのぼのになっているか微妙ですが!)