001. 超振動









バチカルに帰って来てからダラダラなルーク。
私も正直、暇を持て余している。
幼馴染同様に育った私は、ここの使用人だ。

「お前なんでメイドにならなかったんだ?」

という、ルークの素直な発言に。

「仮にも軍人の家の一人娘だったのよ、プライドがあるの!」

何て怒った時代が懐かしい。
私もホドの生き残りだった。

、ちょっと付き合えよ。」

部屋まで来て何かと思えば、特訓というか暇つぶしに付き合えとのこと。

「しょうがない、付き合ってあげよう。」

「お前のその態度相変わらずだなぁ。」

「あはは、悪かったわね、ルークと違って成長してなくて。」

「俺は・・・俺は全然成長なんてしてねぇよ。」

「馬鹿言わないでよ、7歳のあんたの成長が止まってたらびっくりするっての!」

!」

「まぁ口より剣で、ってね。いくわよ!!」



正直、ルークがあんな風に旅に出るまで、私の方が実力は上だった。
まあ、男女の差は技術うんぬんや身のこなしで色々と違うけど、
あの時点では外で実戦経験のあった私の方が有利・・・だったはずなのに。



「・・・はぁ・・・はぁ・・・こ、降参。」

「お前、弱くなったか?」

「ちょっとちょっと、あんたが強くなったのよルーク、アホなこと言わない!」

あたしは練習用の木刀を放り投げてドサっと座り込む。
流石に、成長まっさかりの男の子に勝てるわけもない、か。

「懐かしいな、ここでこうして特訓してたころはさ、によく負けてた。」

「それですぐムキになるわ、怒るわで、ガイも私も大変だったわよ。」

「・・・。」

懐かしいね、と私が笑っても、ルークが黙ったままだった。
流石に悪かったかと思って、顔を覗き込む。

「ルーク?」

「ん?ああ・・・いや、悪かったなって思って。」

「何が?」

「昔は俺が負けたりするとさ、お前に女のくせに剣術ばっかで、暴力的な女だ!って言っただろ。」

「そうだっけ?」

「そうだよ!・・・ごめんな。」

私は笑った。

「いいじゃない、私も覚えて無いんだし。多分、そんなこと言われても曲げる気ないくらい頑固だったのよ。」

・・・。」

「そういえばここで超振動が起こって、ルークの旅は始まったんだもんね。
私の始まりもここだったのよ、知らないと思うけど。」

「・・・?お前は俺がこの屋敷に来た後に採用されたんじゃなかったのか?」

「そうよ、でも帰ってきたばっかりだったでしょ?ルーク。
その時は沢山覚えることがあって、てんてこ舞いだったじゃない。」

「まぁ、そうだったけど・・・。」

「昔ここで、ヴァンに協力しろって言われたの。」



復讐したいだろうって。
確かに、私もあれで家族を失った。
ホド・・・。
そして、私はそのつもりは無いと断った。
私はここで、自分の誇りのために伸し上がっていく準備をするだけだ、と。



「・・・!」

「でも残念ながら私はガイほど執着が無くてね。復讐したいなんて思わなかった。
ルークとさ、幼馴染で良かったと思うよ、ホドも何も関係無しで。」

もし、彼が居なかったら、私も意味も無く復讐を誓っていたかもしれない。
私にはそれよりも、もっと守りたいものがあった。
今は、もはや守るより守られてしまっているけど。
守りきれなかったけど、私はルークが大事だった。

「私がこうして誇りを持ってやってこられたのは、ルークや、もちろんガイ、ナタリアのおかげ。
一緒に居られる同年代の友達って、居ると本当に幸せなのよね。」

「お前・・・ホドでは友達がいなかったのか?」

「・・・ま、いつか話そうとは思ってたけど。ルークみたいだったのよ。」

「俺みたい?」

ルークはわからない、というように首をかしげた。
私はまた笑う。

「軟禁。」

「え・・・?」

「名の知れた軍人の家に女一人しか生まれなかった。恥ずかしかったんでしょうね。
家族は私を外に出すのを凄く嫌っていたから、家に閉じ込められてたの。」

「そんな・・・セシル将軍みたいに、女性だって普通にいるだろう?」

「この国では、ナタリアをはじめ認めてくれる人は多いのにね、父は違ったわ。
そんなの受け入れられないって、そう言ったのよ。」

それで、助かったのだ。
鍵の頑丈に掛かった扉の奥の間に居た私は、偶然にも助かってしまった。

「だから私はむしろ、解放されて嬉しかった、こんな言い方ガイ達には悪いけどね。
それに、認めて欲しかったのよ、両親に、だからここで・・・誓ったの。
復讐なんて、してやらない。その代わり、自分自身の誇りに掛けても、必ず軍人として認められてみせるって。」

「それが、ここだったのか。」

「あの日、超振動からルークの旅が始まったみたいに、あの超振動の後、私やガイの旅も始まったのよね。
正直飛ばされた方向だけで追いかけるのは至難の業だったし、ガイは女性恐怖症で一緒に旅すると大変だし。」

全く壮絶だったわ。
でも、得たものがどれだけ大きいか私は知っている。

「でも、こうしてルークがうじうじしてるようじゃ、折角旅で得たものが勿体無いよ?」

「得たもの?」

「仲間でしょ?経験でしょ?いっぱいあるじゃない。」

「そう、だな・・・。」

「奥様に頼んでみようよ、ちょっと出かけるくらい許してくれるよ!」

「・・・でも俺・・・。」

「何よ、まだアッシュのこと気にしてるの?ここは、アッシュの家でも確かにあるけど、
あんたの家でもあるのよルーク!自信を持ちなさい!!
万が一にでも奥様が帰ってくるなって言ったら一生一緒に旅してあげるから!
ほら、うじうじしてないでいくよ!!」

「わ、わかったよ!・・・ガイもそうだけど、にも隠し事出来無そうだな。」

「しなくていいよ、幼馴染じゃない、言いたい放題言えばいい。」

「ありがとう。」

その言葉を聞いて私は満足した。

「ごめんより、そっちの言葉を待ってたわ、ほら、行こう!」

「・・・ああ!」



泣きたければ泣けばいい。
泣けないなら泣き言を言えばいい。
楽しいなら笑えばいい。
苦しいなら訴えればいい。
私はいつだって、それを受け入れる準備くらい、できてるよ、ルーク。












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2006/1/9

アッシュの後に書きましたが、ルークの方が書きやすいですね。
連載もそうですが、うちのヒロインは元気勝気強気!なプッシュガールですので、
あまり一緒に落ち込んだり泣いたりよりは、背中を押す側になりがちです。
でも、私はルークにはそれが合ってるかなぁ・・・と個人的に思っているので、こんな傾向で。